企業の競争優位はカスタマーサービスで決まる ダイソン、アップル、フェデックスの共通点

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カスタマーサービスは、顧客が問い合わせてくることを前提にするのではなく、顧客のトラブルを理解して、企業側から能動的、予知的にアプローチする必要がある。

戦略的カスタマーサービスで成功したフェデックス

物流世界最大手のフェデックスは、配送上のトラブルが発生して約束の時間に荷物を届けられないと判断した時点から、その配送データを自社のコンタクトセンターを通じて、届け先に通知する仕組みを構築した。トラブルが発生した時点から事態をコントロールし、できるだけ早期に解決策を顧客に提示するという能動的なサービスは、業界初の試みだった。

こうした能動的なサービスを可能にするには、配送業務システムとCRMの連携、SMSを使った顧客とのコミュニケーション、ウェブとナレッジシステムを使って顧客にトラブルの発生を伝え、解決策を提示するという複数のテクノロジーを効果的に組み合わせて、一連の流れを効果的にプログラム化する必要がある。

フェデックスの成功要因は、テクノロジーを先に考えるよりも、顧客にどのようなサービス環境を提供したいのかを先に考えたうえで、テクノロジーを応用したことにある。

配送の遅延に対してほとんどの顧客は、困っても苦情を申し出ることはないかもしれない。しかし、ブランドに対する消費者や法人企業の不安は残り、それはやがてブランド力の低下につながる。

フェデックスのようにサービスを戦略的に捉えてきた企業は、まずCXを徹底的に理解したうえで、サービスやそのデジタル化への投資を惜しまない。配送遅延で苦情を問い合わせてきた顧客に対応すれば解決するのではなく、不満でも問い合わせてこない顧客(サイレントカスタマー)の存在を意識して、能動的なサービスをデザインする必要がある。

実はフェデックス社内でも、この取り組みの有効性については相当の社内論議があったという。最終的には担当チームがグッドマンの理論を使って経営陣を説得し、業界で先陣を切って着手したようだ。数年後にはライバル企業も同様のサービスを手がけることになった。物流サービスは日進月歩で進化している。

アップルやフェデックスの事例は、ほんの一部にすぎない。もはや、CXが強くない企業、サービスが弱い企業は、消費者や顧客から見放される時代だ。

以上、カスタマーサービスの戦略的重要性をご理解いただきたく、世界の代表的な企業の事例を紹介した。CXやDXにシフトする企業が増えているが、テクノロジーがすべてを自動で解決してくれるわけではない。その前に「顧客をどのようにもてなすか」を決める必要がある。御社が競争優位を確保するためにも、カスタマーサービスをおろそかにしてはいけない。

畑中 伸介 ラーニングイット代表取締役

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はたなか のぶすけ

1957年大阪府生まれ。79年関西外国語大学卒業、81年ベルシステム24に入社。85年ロサンゼルスにてアイディアリンク・ジャパンを創業。滞米16年を経て、98年にプロシードのCOPC事業を設立。COPC規格を国内で普及させ、200社を超える顧客サービスやサポート事業の品質審査、パフォーマンス強化を支援。2011年ラーニングイットを創業。ジョン・グッドマンとの共同調査や組織診断を開始し、CXやカスタマーサービスをテーマに戦略立案から構築・運用までのワークショップやプロジェクト支援を行う。共著書に『コールセンターマネジメント』(生産性出版)、訳書に『顧客体験の教科書』(東洋経済新報社)などがある。

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