企業の競争優位はカスタマーサービスで決まる ダイソン、アップル、フェデックスの共通点
ジョブズがめざしたカスタマーサービスと、一般的に理解されているカスタマーサービスとは戦略性が大きく異なる。多くの企業はカスタマーサービスを一部門の業務として捉えがちだが、ジョブズはアップル全体の企業戦略としてカスタマーサービスを位置づけて、全部門とすべての社員にその重要性を訴えている。
ジョブズのめざすカスタマーサービスは製品デザインに始まり、マーケティング、顧客への教育的なプログラム、そしてトラブルや疑問に応えるサポートまで、事業活動のあらゆる側面を顧客視点で捉え直すという、CXの概念に基づいている。
「グッドマンの法則」で知られる経営コンサルタントのジョン・グッドマンは、カスタマーサービスを一部門の仕事ではなく、企業の戦略的な活動として位置づけ、収益との関係性を説いた。
グッドマンは1970年代以降、ホワイトハウスからの委託調査において、100社以上の企業とそのCXを分析することで、カスタマーサービスやCXの概念を実践可能なモデルへと体系化させていた。
グッドマンのモデルは、すでにフォーチュン100社中の半数近くの企業で採用されているが、そのマネジメントフレームワークは今でも健在だ。
実際、2021年のアメリカ企業ブランドランキングで「最優秀」評価を受けたファストフードチェーンのチックフィレと、ペット用品チェーンのペットスマートは、グッドマンの理論を実践することで、この10年間で急成長を遂げた。
いずれも共通点は、カスタマーサービスを企業全体の競争力として最優位に位置づけ、テクノロジーと人材の融合的なサービスシステムを構築した点にあるだろう。筆者はアメリカでこれらの企業を視察し、経営幹部にインタビューしたが、サービスへ重点投資をしたことで、高収益モデルを実現したことがわかった。
顧客の苦情を待たずに企業は能動的に行動せよ
グッドマンが1970年代から提唱したサービスモデルの特徴は、企業の顧客ベース全体を視野に入れて、サービスのあるべき姿をモデル化した点だ。
カスタマーサービスというと、コールセンターをイメージする方が多いと思うが、その利用者は顧客ベース全体の一部にとどまる。実際にコールセンターを利用する顧客は全体の2~3割にすぎない。
つまり、多くの消費者や顧客はトラブルや疑問があってもわざわざ問い合わせてこない。それどころか、問い合わせようとしてもコールセンターにつながらないなどの障壁があると、あきらめてしまう。結果的に、嫌な体験をした顧客は、何も言わずに黙ってほかのブランドにスイッチしてしまう可能性が高くなる。
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