南アメリカのチリの裁判所は1月14日、同国アタカマ州のミゲル・バルガス知事および地域住民からの訴えを受理し、2日前の1月12日に実施されたリチウム資源開発権の国際入札の手続き停止を命じた。この入札では、中国のEV(電気自動車)大手の比亜迪(BYD)が6100万ドル(約70億円)で開発権を落札していた。
世界最大規模のリチウム資源を擁するチリは、隣国のボリビアおよびアルゼンチンとともに南アメリカの「リチウム・トライアングル」の一角を成す。2021年10月、チリ政府は国内の40万トン相当のリチウム資源開発権を入札にかけると発表。開発権を8万トン単位の5つの契約に分割して国内外から広く応札を募り、開発の加速を図るもくろみだった。
(訳注:チリ政府の国際入札の背景については『南米チリ、「リチウム資源」の開発を対外開放へ』を参照)
ところが、2021年12月に行われたチリの大統領選挙で左派のガブリエル・ボリッチ氏が当選したことで、雲行きが変わってきた。2022年3月に新大統領に就任するボリッチ氏は、中道右派で現職のセバスティアン・ピニェラ大統領が進めた国際入札をかねて批判しており、新たな国営企業を設立して自国のリチウム資源開発を担わせるべきだと主張している。
BYDの入札価格はアメリカ企業の4倍超
チリ北部の山間部にあるアタカマ塩原には、全世界のリチウム資源の約3分の1が存在するとされている。その周辺で暮らす住民たちも、国際入札は(外資による収奪で)地域の環境保護や経済発展に悪影響をおよぼすとして、不満を募らせている。
BYDにとって、今回の入札手続き停止は大きな痛手だ。2021年からEVの販売が中国市場で急拡大したのに伴い、車載電池の需要が急増。リチウムイオン電池の主原料の1つであるリチウムの価格は、過去1年間で3倍以上に跳ね上がった。BYDはリチウムイオン電池の大手メーカーでもあり、電池の製造コストを抑制するためにリチウム資源を直接確保すべく、チリの国際入札に参加したからだ。
チリ政府は1月12日に8万トン分の開発権2件を入札にかけ、5社が応札。BYDとチリ企業の2社が、それぞれ1件ずつ獲得した。
BYDの入札価格はチリ企業より100万ドル(約1億1400万円)高く、アメリカのリチウム大手であるアルベマールの4倍以上だった。財新はBYDの入札価格(が適正だったか)について同社にコメントを求めたが、1月16日の時点で回答は得られなかった。
(財新記者:盧羽桐)
※原文の配信は1月16日
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