中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)による海外リチウム資源の買収計画に、にわかに暗雲が漂い始めた。
CATLは2021年9月末、南米アルゼンチンのリチウム塩湖の資源開発権を持つカナダ企業、ミレニアル・リチウムを3億7700万カナダドル(約346億円)で買収する(法的拘束力のない)権利を獲得した。ところが11月1日、カナダの資源開発会社であるリチウム・アメリカズが後から提示した買収案を、ミレニアル・リチウムが受け入れると発表したのだ。
リチウム・アメリカズの提案は、同社がCATLの買収予定価格を22%上回る総額4億ドル(約455億円)でミレニアル・リチウムを買収し、さらにCATLに対して2000万ドル(約23億円)の解決金を支払うというもの。なお、CATLはリチウム・アメリカズを上回る条件を再提案すれば、買収の優先権を維持することができる。
資源会社や電池メーカーによる争奪戦が激化
ミレニアル・リチウムは、南米のアルゼンチンにある「パストス・グランデス」と「カウチャリ ・イースト」という2つのリチウム塩湖の開発権を保有する。リチウムは車載電池の製造に欠かせない原材料であり、資源開発会社や電池メーカーによる開発権の争奪戦が激化している。
そもそも、ミレニアル・リチウムの買収権を最初に獲得したのはCATLではなかった。2021年7月、中国のリチウム製品大手の贛鋒鋰業(ガンフォンリチウム)が3億5300万カナダドル(約324億円)での買収を提案し、ミレニアル・リチウムが同意した。ところが、CATLが贛鋒鋰業を6.8%上回る金額を後から提示し、買収権を奪取したのだ。
(訳注:買収権奪取の経緯については『中国CATLが南米のリチウム開発権を「奪取」した訳』を参照)
実は、贛鋒鋰業はリチウム・アメリカズの発行済株式の12.5%を保有しており、同社の取締役会に役員を送り込んでいる。リチウム・アメリカズがCATLを大幅に超える買収金額を提示したことについて、財新記者の取材に応じた贛鋒鋰業の関係者は「その議論にも取締役会の決議にも、わが社は一切かかわっていない」とコメントした。
(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は11月3日
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