ローソン、「専用ビスコ」の深い戦略 原材料にこだわり、「お菓子で健康」を推進

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同社では健康に良いと判断した食品の売上高を、一般的なメーカーの商品(NB商品)も含め2013年度の600億円から今年度は1000億円、2017年度には3000億円まで引き上げようとしている。同社のヒット商品としては低糖質で糖尿病やダイエット中の消費者に人気の高い「ブランパン」があるが、いまひそかにヒットしつつあるのが「お菓子」だ。

低糖質、低カロリーなどが商品開発の主な軸だが、ほかに2億個の乳酸菌が入ったローソン専用のビスコ(江崎グリコの定番ビスケット製品)などがある。当初これらの商品は20~30歳代の女性などがターゲットだったが、実際に売り出してみるともう少し上の世代の女性によく買われた。

健康菓子コーナーを拡充

「これまでは、“お菓子で健康”、ということは意識していなかったが、データを見てみると(消費者に)受け入れられている」と大山専務は自信を見せる。

売れ筋のNB商品と比べて、健康菓子はリピート率が数%高いものもあるという。店舗でもこれら健康菓子だけのコーナーを確保しており、今後の成長に期待をかける。

先述のビスコは江崎グリコが製造しているが、含まれている乳酸菌は違うメーカーの商品を組み合わせている。ローソンでは各メーカーの持つ独自技術を収集、代わりにポイントカードサービス「PONTA」で集めた購買データを提供し、共同で商品開発を行う「イノベーションラボ」と呼ぶ取り組みに力を入れている。メーカーの持つ技術やノウハウを掛け合わせて新しい商品を生みだし、ローソン店舗という実験場で検証を重ねられる仕組みだ。

4月の時点でこのラボに協力しているメーカーは70社ほどだったが、現在その数は倍の140社ほど。当初は1社1社、メーカーの技術開発担当者を訪ね、狙いやメーカー側へのメリットを説明して回ったが、結果が出るにつれて逆に声をかけてくる事例も増えているという。

コンビニ業界では、王者セブン-イレブンだけが1店舗当たり売上高のプラス成長が続いており、独り勝ちの様相を呈している。ローソンは常々、「業界2位としていかに独自色を出すか」に苦心してきた。競争激化や消費増税の影響が続く厳しい環境のなかで生き残りをかけ、差別化への模索が続く。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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