1月24日イタリア大統領選に市場が注目するワケ 政治的安定の要であるドラギ首相に退陣のリスク

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特に現在、議会で最多の議席を持つ「五つ星運動」は、ポピュリスト政権発足後に連立パートナーの「同盟」や別の右派ポピュリスト政党「イタリアの同胞」に支持を奪われている。国民から人気の高い非政治家のジュゼッペ・コンテ前首相を党首に迎えた後も、党勢低迷に苦しんでおり、早期の解散・総選挙に及び腰だ。

ドラギ首相の大統領への転身が避けられない場合でも、ドラギ首相の後継首相が上下両院で信任されれば、議会の解散・総選挙を行う必要はない。議会の解散権を持つ大統領にドラギ氏が就任する場合、コロナ禍克服と経済復興に向けた重要局面での政局不安定化とポピュリスト政権誕生につながる総選挙を回避しようと考える可能性が高い。

後継首相が支持を得られるかどうかが焦点に

ドラギ氏の大統領就任と首相退任が決まれば、イタリアの政治安定が崩れるとの不安から金融市場に動揺が広がるだろう。だが、解散・総選挙が回避されることが確認されるとともに、市場の動揺は比較的早期に収まるとみられる。問題はドラギ氏に代わる後継首相候補が議会の信任が得られずに政権が発足できない場合や、後継首相が就任した後もドラギ首相ほどの幅広い支持が得られずに政治安定に綻びがみられる場合だろう。

前者の場合、解散・総選挙が避けられず、イタリアに再びポピュリスト政権が誕生する可能性が高まる。後者の場合、改革の推進力が低下するとともに、近い将来に政権運営が行き詰まり、任期前の議会解散につながる不安が拭えない。注目のイタリア大統領の選出投票は24日に迫っている。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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