「相手に動いてもらう」ために必要な7つのスキル 「3つの落とし穴」と「4つの壁」を超える事が重要

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最後に、「ペーパー業務が非効率なことはもう明らかなので、忙しい現場の時間を使ってわざわざヒアリングする意味はないでしょう」といった反応も考えられるでしょう。割に合わないので動きたくないということです。これが「損得勘定の壁」です。

これら4つの壁を乗り越えて、相手と共に結論を進化させられれば、相手との関係は一段深まります。また、共に導き出した結論なので、二人三脚で物事を進められるようにもなるでしょう。つまり、相手が前のめりになって気持ちよく動いてくれる状態です。そのような状態に持っていけるようになるには、次に挙げる7つのスキルを鍛えることが近道です。

4つの壁を乗り越える準備として必要なのが、「想定する力」と「段取りする力」です。

「想定する力」とは、その場のゴール設定をしたうえで、発生しうる壁(疑問や反論)をできる限り洗い出し、どう対応していくかのシミュレーションをするスキルです。「段取りする力」とは、相手の発言を引き出してディスカッションを双方向に進めながら、場の目的を達成するために、相手の発言を資料や議題に落とし込むスキルです。

次に、4つの壁を乗り越えるためのスキルも必要です。

4つの壁を乗り越えるためのスキルとは

まだ気を許していないので動きたくないという「関係性の壁」があるときは、まず相手を十分に理解することです。「理解を深める力」で相手との関係を築く必要があります。状況がクリアになっていないので動きたくないという「情報整理の壁」を乗り越えるには、その場に出ている情報をビジュアルで整理して、相手と確認することで場を前進させる「見える化する力」を使います。

先入観や固定観念による「思い込みの壁」があるときには、思い込みの原因を特定して、認知の枠組みを再定義(リフレーミング)することが有効です。いうなれば、「思い込みを外す力」です。相手が割に合わないと感じているときに現れる「損得勘定の壁」が立ちはだかったら、選択肢を増やしたり判断基準を問いかけたりすれば、意思決定の軸を動かせます。これを「軸を動かす力」と言っています。

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最後に、おおむね内容に合意ができたら、熱量が落ちないように相手にとって「自分ごと」にしていく必要があります。決めたアクションが着実に遂行されるまで、相手と一体になって推進していくスキル、つまり「巻き込む力」の出番です。

これらの7つの力を高めると、相手が気持ちよく動いてくれる状態をつくれるようになります。それだけでなく、他の人とのディスカッションを通じて結論を進化させられるようになれば、自分ひとりでは成し得ないような大きな事柄にもチャレンジできるようになるのです。

これは、相手の議論や反論を「封じ込めるべき対象」と考え、自説の正しさを相手に納得させようとする姿勢からは決して生み出せない未来といえるでしょう。

高橋 浩一 TORiX株式会社代表取締役

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たかはし こういち / Kouichi Takahashi

東京大学経済学部卒。外資系戦略コンサルティング会社を経て25歳で起業、企業研修のアルー株式会社に創業参画(取締役副社長)。2011年、TORiX株式会社を設立。3万人以上の営業強化支援に携わる。コンペ8年間無敗の経験を基に、2019年『無敗営業「3つの質問」と「4つの力」』、2020年に続編となる『無敗営業 チーム戦略 オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ』(ともに日経BP)を出版、シリーズ累計7万部突破。2021年『なぜか声がかかる人の習慣』(日本経済新聞出版)、『気持ちよく人を動かす』(クロスメディア・パブリッシング)を出版。年間200回以上の講演や研修に登壇する傍ら、「無敗営業オンラインサロン」を主宰。

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