例えば、連絡がなく帰宅が遅い子どものことを「心配」するという気持ちから、帰宅した瞬間に「こんな時間まで何してたの!」と怒鳴りつけて「怒り」をぶつけてしまう。また、信じていた人に裏切られて「悲しい」という気持ちが、相手を責めるという「怒り」としてあらわれるといったこともあります。単純に「怒り」をぶつけても、相手は受け取りづらく、真意も伝わりづらいです。ですから、1次感情に目を向け、自らがそれを認識したうえで、相手に伝えることが必要になります。
いずれにせよ、自分の中で把握できていない気持ちを伝えるのは至難の業です。自分が何を相手に伝えたいのかを明確にしましょう。
次に、過度に遠慮しないということです。
「こんなこと言って嫌われないかな」「相手に悪いかな」という気持ちがあると、伝え方が曖昧になります。遠回しな言いかたになったり、回りくどく話すことにもなりがちです。なかなか本題にたどり着かずに、結局何が言いたかったのか相手に伝わらないということも起こりえます。
「ちょっとぐらい手伝ってほしいのだけど」と家族に伝えても、何をどうしていいのかわかりません。「部屋の掃除をしたいから、1時間、子どもを公園に連れていって」「月曜日の燃えるゴミの日には、玄関にゴミをまとめておくから、集積所まで持ってでてね」など、できるだけ具体的に細かく伝えることが大切です。自分が相手に要求すること、どこまで何をしてほしいのかを明確にして率直に伝えましょう。
例えば、「トイレットペーパー買ってきて」と夫に頼んだら、普段買わないような高級なものを買ってきて文句を言ったらケンカになったという話を聞きました。普段使っているものぐらいわからないのかと思うかもしれませんが、人は自分の興味のあること以外は、身近なものでも意外と認識できていないのです。おそらく、気にならない人は、トイレットペーパーがダブルでもシングルでもまったく問題ないのではないでしょうか。ですから、そこまで具体的に伝えることが必要なのです。伝わらなかったと嘆く前に、自分の意向をはっきりと伝えましょう。
伝える内容と「表情や態度」を一致させる
そして、「このぐらい察してくれればいいのに」という気持ちを手放すことです。私は、こんなに頑張っているんだから理解してと相手にゆだね、わかってもらえなかったからといって、怒りをぶつけるのは暴力です。誰にでもわかる表現で具体的に伝えていないにもかかわらず、文句を言うのは筋違いです。
そして、伝える内容と表情や態度を一致させることです。あまり強く言うのもどうかなと遠慮して、笑顔で指摘しても、大したことだと思われません。反対に、無表情でお礼を言ったり、褒めても嫌みに聞こえてしまうこともあるでしょう。視覚情報は、コミュニケーションの中でも優位なので、伝えたい内容とずれがあると、相手は混乱します。
また、感情的になりすぎると、そちらに注意が向いてしまい、本質が伝わらないこともあります。自分でも制御できないほど感情が高ぶっているときは、あえて「伝えない」ことも大切です。
身近な人とは、特に何も言わなくてもわかるだろうという「以心伝心」を理想とされるかもしれませんが、幻想です。自分の意思表示をわかりやすく伝えることはもちろんのこと、身近な人間関係だからこそ、こうだろうと勝手に思い込まずに相手の意見に耳を傾けることで、よりわかり合える関係性を築いていくことができます。自分の意思をはっきりと認識し、ちょっとした手間を惜しまずに、具体的に伝えることで、行き違いのないスムーズな意思疎通を目指してください。
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