恨み・怒りは「持つだけ無駄」と言える納得の理由 不満をぶちまけるのは「一種の快感」だが…
一方、不平不満をため込むと、「負のスパイラル」が生まれる。
ものごとがうまくいくのではなく、どんどん困難になっていく。ネガティブな気分が高まると、視野が狭まり、新たなアイデアや他者に対して心を開くことができなくなる。心身が縮こまり、使えるリソースがどんどん少なくなる。
その結果、そもそも不満の原因だった状況を変える力さえなくなってしまう。そしてまた不満が増えていく。
このように、動きだしたら止まらない現象を、ジム・コリンズは、「弾み車の法則」と呼ぶ。
「一度回転がつくと、それ以上力を入れなくても、弾み車はどんどん速く回りだす」とコリンズは言う。「2回転、4回転、8回転。弾み車に勢いがつく。16回転、32回転。どんどん動きが速くなる。1000回転、1万回転、10万回転。そして、ブレイクスルーがやってくる。もう止められない速さで、弾み車は勝手に回りつづける」。
要するに、ポジティブな態度はどんどんポジティブな効果を生む。最初の勢いさえつけてしまえば、成果を出すのはどんどん簡単になり、やがてはエフォートレスになるのだ。
交通事故で家族を失ったある人の話
クリス・ウィリアムズは、人生の最優先事項を知っていた。家族だ。彼にとって家族とは、何ものにも代えがたい価値のあるものだった。
ところが2007年のある冬の日、悲劇が起こった。家族を乗せて車を運転していたときに、若者の運転する車が全速力で横から突っ込んできたのだ。ウィリアムズの妻と、お腹にいた赤ちゃんと、9歳の娘と、11歳の息子が亡くなった。
6歳の息子はかろうじて生き延びた。14歳の息子は、そのとき友人の家にいて事故には遭わなかったが、ショックでふさぎ込んでしまった。
そんなことがあったら、打ちのめされるのも無理はない。理不尽な出来事への怒りと悲しみに、普通は圧倒されるだろう。事故の加害者への恨みを何十年も抱きつづけたとしても仕方ない。ところが、ウィリアムズはそうしなかった。
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