前回の記事で筆者は出戻り転職を「復縁」に例えた。新卒就活の分野で就職を「恋愛」になぞらえられがちなことにちなんでの例えだったが、中島さんの話も、「年齢を重ねてから、新しくイチから関係を築くのは大変」という意味で、復縁に似ている印象だ。年齢が高くなってからの転職はお互いに慎重になるケースが多い。一方で、長く勤めた会社であれば、社員とのコミュニケーションコストは必然的に低くなる。
ちなみに、もともと中島さんは、会社を選ぶ際に”居心地の良さ”を見ていたという。上記の出来事の結果、その配分は増すことになり、そして心はHENNGEに向くことになった。
「異なる環境を経験したことによって、もともといたHENNGEという組織を俯瞰して考えるようになりました。そのなかで、心境に変化があった。『やり残したことはない』と思っていたけど、『まだまだできることはあったかもしれない』と思うようになったんです」
「絶対戻らないっすよ」と言っていたが…
「外を見たことで、HENNGEの良さがわかった」という中島さんだが、出戻り転職に対して、一風変わったハードルも抱えていたらしい。
「退社後に、既存社員と卒業生の交流イベントに呼んでもらったことがあったんです。そこで『HENNGEに戻る可能性はありますか?』という質問があって、僕は『いやいや、絶対戻らないっすよ』と言い切っていたんです。退社する時も、格好いいこと言って辞めてたりもして……今なら青かったなって思いますけど、当時は本気でそう思っていたんですよ」
そんな状況だったからこそ、親交の深かった副社長に連絡した時は、さまざまな迷いがあったよう。中島さんとしては「本業とは別に、個人で人事コンサルティングの会社も持っていたので、正社員でなくても何かしらの形で関わることができないか」という温度感だったが、とんとん拍子で決まったZoomでの話し合いでは、正社員として入社の提案。そのうえで、副社長から驚きの言葉を聞くことになる。
「元の環境に戻ることに、僕としては多少なりとも恥ずかしさがありました。だからこそ、戻るなら骨をうずめる覚悟をしないといけない……と思っていたんですが、副社長は『そんなのべつに気にしなくていいよ。うちは3回入社した社員だっているし、なんなら入社・退社の最高記録を作ってくれてもいいから』と言ってくれて。拍子抜けしたのと同時に、なんて懐の深い会社なんだって感動したんです」
その後、正式な面接を行い、中島さんは正社員として戻ることが決まった。すると、今まで気づかなかったことが、見えてくることになる。
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