日米中韓豪ロなどの首脳が、呉越同舟さながらに1週間かけて地球を縦に大移動する様子を想像してほしい。ロジ担当の外交官たちはさぞかし頭を抱えていることだろう。
一例を挙げれば、カナダのハーパー首相やメキシコのニエト大統領は、APECとG20には出るが、EASには呼ばれていない。その間の3日間、どこでどう暇をつぶすのか。わざわざ太平洋を往復して帰国するのも勿体ないしねえ。華々しい首脳外交の陰には、事務方の一方ならぬ苦労が隠れているのである。
正直言って、この際、多少の外交儀礼上のマナー違反は想定の範囲内だろう。ましてネピドーはインフラも良くないし、ミャンマー政府はこの手の舞台回しに慣れていない。大混乱の絵柄が今から目に浮かぶようだ。
中間選挙後のアメリカが心配だ
会議そのものは、どうってことはない。短い日程の中にこれだけ大勢の首脳を呼んでしまうと、実態は「大弁論大会」になってしまう。実のある討議ができるのは、せいぜいG7くらいまでであろう。おそらくは事務方が事前に用意したシナリオに沿って、各国首脳が互いにかみ合わない演説を言いっ放しにし、最後は議長国が形式的なコミュニケを発表して幕を閉じる。「会議は踊る、されど何も変わらない」というのがオチであろう。
ただし「国際会議3レンチャン」は、無数のロビー外交の機会を提供することになる。例えば北京のAPECにおいて、たとえ儀礼的な短いものであっても、日中首脳会談が成立したとしよう。その場合、朴槿恵大統領はどう出るのか。この際、ネピドーかブリスベーンで、日韓首脳会談に応じた方が良いと考えるかもしれない。いや、「立ち話だけ」というのはどうか。それともあいかわらずの「イケずビーム」で安倍さんに対応すべきか…。
1週間の長丁場だけに、無数の思惑が交錯するだろう。なにしろオバマ大統領とプーチン大統領と安倍首相その他大勢が、何度も何度も同じテーブルでメシを食うのである。さらに全世界の取材陣がついて回る。ジョークひとつ、写真一枚が命取りになるかもしれない。議長国への土産物を考えるのも、もちろん一苦労である。
3レンチャンに対する、各国の出方を考えてみるのも一興である。
アメリカは中間選挙の直後である。オバマさんはたぶん苦い顔で太平洋を越えてやってくる。なにしろ与党・民主党には逆風が吹いていて、上下両院ともに共和党が議席を増やすと目されている。となれば、下院435議席は今まで通り共和党多数、上院100議席は今のところ民主党が5議席リードしているが、それも逆転されるかもしれない。これでは各国首脳を前に、TPP交渉の前進を訴えても、迫力は出ないはずだ。
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