あからさまな供給制限は起きないとは思いますが、日本政府が予定している3度目のブースター接種の前倒しスケジュールは、ワクチンが入ってこないという理由で少しずつ後ろにずれていくリスクは可能性として想定しておいてもいいでしょう。
そしてこれは日本だけでなく欧米各国でも同様に起きるリスクでもあります。ブースター接種と治療薬確保によって経済をアフターコロナへと移行される各国のスケジュールは、チャイナリスクによって後ろ倒しになる可能性があるのです。
北京オリンピックの成功によって日本経済が期待していた最大の利点は、中国からのインバウンド客の復活でした。オリンピックが大丈夫であれば、いよいよコロナ禍も収束し、それに合わせてこれまで制限されてきた海外との交流も再開するというのが、日本経済が期待する2022年のシナリオだったわけです。
オミクロン株が中国を席巻すれば楽観シナリオは後退
オミクロン株が中国を席巻する事態になれば、この楽観シナリオは大きく後退します。
2019年までの「年間3000万人の訪日観光客が日本各地の経済を潤す」という状態は、現在でも早ければ今年の夏頃から期待できる可能性はあるのですが、あくまでそのシナリオはオミクロン株の拡大がそれほどの規模にはならなかった場合での想定です。
実際、オミクロン株が急拡大しているイギリスでも、ジョンソン首相は「今回はロックダウンをせずに経済優先で乗り切る」と宣言しています。少なくとも日欧米のように2度のワクチン接種によって一定レベルの集団免役が獲得できている国においてはそのような選択は論理的にありえる態度だと思います。
ところが多くの国の首脳はジョンソン首相のような強い立場はとりにくいはずです。アメリカのバイデン政権はこの秋に中間選挙を迎えます。オミクロン株への対処次第では与党である民主党が大きく議席を減らすリスクが存在しているため、無謀な緩和策はとることができないでしょう。
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