キリン人事改革、管理職に示された3つの道 2015年1月から新たな制度へ移行

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新制度の対象となる管理職が3事業会社でどれくらいいるかは不明だが、関係者によれば3社合計で800人がキリン社への転籍を決めた。このタイミングで成果主義を導入することについて、前出の人事関係者は「厳しい事業環境でわれわれのビジョンを体現するためには、もっと個人が頑張らなくてはいけない。新制度はモチベーション向上につながる」と話す。

第2の選択で、事業会社に止まることを選択した場合、従来通りの年功序列型の給与体系が適用される。転籍者と比べてグループをまたぐ異動も少なく、収入が大きく変動することもない。だが、成果主義を導入するキリン社の社員と共に働く以上、これまでと何も変わらず現状維持というわけにはいかないだろう。一方、退職という第3の選択肢について、早期退職を希望する人には、通常よりも2割多い退職金を支払う措置をとった。退職を選んだのは数十人程度だという。

3つの選択肢の効用

キリン社とキリンビール社長も務める磯崎氏。キリンはどう変わるのか

2014年12月期のキリンHDの業績は売上高がほぼ前期並みの2兆2600億円、営業利益は前期比2%減の1400億円を計画しており、2期連続の減益となる見通し。しかも、ライバルのサントリーが巨額買収で米蒸留酒大手のビーム社を取り込んだことで一気に規模が拡大。その結果、今年度は売上高でサントリーが追い抜くという、キリンにとっては“屈辱の年”となりそうだ。

上半期(1~6月)のビール類の課税出荷数量では、大手4社の中でキリンだけが前年割れとなった。7月の戦略説明会の場で、キリンビールの社長も務める磯崎氏は、下半期の挽回策について「キリンの『行儀良さ』から脱し、戦う集団となるべく営業の意識改革を行う」と熱い意気込みを見せていた。酒類に限らず飲料市場の競争環境が厳しくなる中、モチベーションの向上を狙った成果主義の導入は、キリングループ全体にどのような効果をもたらすのか。新制度が動き出す来年はキリンにとって節目ともいうべき年になるだろう。

(撮影:今井康一)

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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