コロナが明らかにした世界経済システムの大問題 「ネオリベラリズムによる秩序」は終わるのか

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かつて世界の覇権を握り、公衆衛生の分野で世界のお手本だったはずのふたつの国が、なぜ今回の感染症対策であれほど手痛い失敗をしてしまったのか。なにかもっと深い問題を反映しているに違いない。

ふたつの国に共通する、ネオリベラリズム(新自由主義)に対する信奉だろうか。あるいは、この数十年にわたる衰退がついに来るところまで来たというわけか。それとも、偏狭な政治文化の表れなのか。

大規模な財政・金融政策

コロナ危機の経済政策は、2008年の世界金融危機の体験を手本とした。今回の財政政策は2008年の財政政策の規模を凌ぎ、対応も早かった。

中央銀行の介入には、さらに目を見張るものがあった。もしそのふたつを、つまり財政政策と金融政策とを緊密に結びつけるならば、かつて急進的なケインズ学派が提唱し、新たに「現代貨幣理論(MMT)」のようなドクトリンによって、ファッショナブルに甦った経済理論の基本的な考えの正しさを裏づけていた。

家計と違って、国家財政には制限がない。もし紙幣を刷る主権国が、資金調達の計画を技術的な問題にすぎないとみなす時、それ自体が政治的な選択である。

第2次世界大戦中に、ケインズもこう答えている。「われわれが実際に行えることは、なんでもわれわれには買うことができます」。

本当に難しいのは――真の政治的な問題は――私たちがなにをしたいのかについて同意し、それを成し遂げる方法を見つけ出すことだった。

2020年に経済政策の実験に取り組んだのは、裕福な国だけではなかった。

連邦準備制度理事会(FRB)が解き放った莫大なドルのおかげとはいえ、あちこちの新興市場国の政府は、グローバルな資本移動の激動で培った数十年の経験を活かし、優れたイニシアティブを発揮してコロナ危機に対応した。

グローバルな金融統合のリスクをヘッジできる、金融政策のツールキットを活用したのだ。

中国がウイルスの封じ込めに成功したことから、2008年と違って、中国の経済政策は皮肉にもかなり保守的に見えてしまった。

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