“土着”から脱却せよ! アサヒビールが挑む海外派遣制度
営業利益の9割以上を国内、しかもビール類を中心とした酒類類事業で稼ぐ“土着”のアサヒがここまで踏み切る背景には、国内市場の停滞がある。
少子高齢化などに伴って酒類の需要が減っているうえ、最近は低価格志向で安価の「第3のビール」が台頭。国内のビール類総市場は今後も縮み続けると見られる。こうした中、近年、ビール各社は新たな収益源として海外進出を加速している。アサヒも豪飲料大手のシュウェップスなどを買収した一方、昨年は中国ビール2位の青島ビールに20%出資するなど、海外事業拡大に力を入れる。ただ現況、アサヒの海外事業売上高は全体の7%程度と、3割近くに達するライバルのキリンビールからは大きく後れをとっている。
昨年末に発表したアサヒビールの長期戦略ビジョンでは、2015年の売上高目標2~2.5兆円のうち、海外比率を20~30%に引き上げるとしており、今後一段と海外企業のM&Aを進めることは必至。そのためにも、海外経験や知識の深い人材が欠かせない。
海外経験や語学力より国内業務での専門性重視
今回、選ばれた10人は、年齢も職種もバラバラだ。派遣制度の指導する人事部の三浦一郎氏は「選抜で重視したのは、海外経験や語学力よりも、国内業務ですでに専門性をもっている人」と話す。
実際、中国・北京へ派遣される新潟広域営業部主任の岡部将己氏も、入社5年目と社歴は浅いが、家庭向け商品中心に営業の経験を積んできた。もっとも、入社以来、あこがれていたのは海外事業への挑戦だという。「思ったより早く実現した。北京はアサヒが重視している市場なので、何にでも興味をもち、現地の流通システムを把握したい」と意気込む。
豪州に派遣される業務システム部副課長の鷲森良太氏も、入社前から海外市場に興味をもっていた1人。広島営業企画部を経て、業務システム部に4年在籍したが、「そろそろ新しい所で仕事をしたかった。アサヒグループ全体としても新しい事に挑戦しなきゃいけない時に、自分の力でどこまで貢献できるか、このプログラムで試したい」。