──貧血になる「ブルーベビー症」だけでなく、発がん性も?
伊藤園:そういう話もあります。ブルーベビー症もそのとおりです。やはり硝酸態窒素はあまり取りすぎるとよくありません。
硝酸態窒素は何に入っているかというと、窒素系の肥料です。農作物を色よく、形よく、大きく育てようとすると、やはり肥料をたくさん与えすぎてしまう。そうすると、野菜のほうに蓄積されてしまうのです。
ただし、農水省は今のところは「発がん性物質に変わるという証拠は得られておりません」と言っています。
野菜ジュースは、ゆでてから搾るという行程を取ります。硝酸態窒素を除去するいちばんの方法は、ゆでること。ゆで汁のほうに硝酸態窒素が流れ出るので、野菜ジュースは生の野菜に比べてむしろ少ないのです。
──伊藤園では野菜ジュースの硝酸態窒素の含有量を調べていますか。
伊藤園:2カ月に1回測って記録しています。われわれは厳しい目標値を設定して管理しています。WHOで定める1日の許容量は、体重1kg当たり3.7mg。われわれは、体重30kgの子どもが1日に200mlの野菜ジュースを10本、毎日飲み続けても平気な量を目標値にしています。
WHO の基準で30kgの子どもの許容量は、30kg×3.7mg=111mg。われわれは1本200ml当たり11.6mgが目標値。10本ですから2リットル飲んでも116mgです。しかし、子どもが毎日、野菜ジュースを2リットル飲むというのは、普通はありえる数字ではありません。
──その目標値に収まっているのですか。
伊藤園:全部が全部収まってはおらず、目標値の周辺です。自分たちでハードルの高い目標値を作って管理しているということです。野菜は自然の産物なので、栄養素と同じように、産地や季節によって変わるのです。
──カゴメでは硝酸態窒素に対して何か取り組みをしていますか。
カゴメ:生野菜、特に葉物野菜には比較的多くの硝酸塩(硝酸態窒素)が含まれます。カゴメの野菜加工プロセスにおいては、熱水でのブランチング処理を行っており、この工程で硝酸塩(硝酸態窒素)は低減できますので、商品の含有量は生野菜に比べて減少しています。
──含有量は?
カゴメ:「野菜一日これ一本」の硝酸態窒素(硝酸イオンとして)の含有量は、1本200ml当たり29mgです。また、必要に応じて原料や商品の含有量を検査しています。
この量(29mg/200ml)は、厚生労働省のデータなどを参考にしますと、生のほうれん草の量に換算して約8g程度となり、非常に少ない量と言えます。ジュースよりも、生野菜を食べた場合に、より多くの硝酸塩(硝酸態窒素)が摂取されています。
──ご回答いただき、ありがとうございました。
これまで伊藤園とカゴメの野菜ジュースを交互に飲んできた筆者は、「ドリンクの裏側」特集を機に、飲むのを中断していたが、メーカー側の話を聞いて、怖さはいくらか和らいだ。
さて、再開しようかどうしよう? 伊藤園の「1日分の野菜」とカゴメの「野菜一日これ一本」の大きな2つの違いは、栄養成分を添加しているか、中国産の野菜を使っているか、だ。どうしても食品添加物が嫌な場合は、カゴメの「野菜一日これ一本」、安全だとしても中国産の野菜が嫌な場合は、伊藤園の「1日分の野菜」という選択になる。もちろん、ほかのメーカーの野菜ジュースも、ホームページなどでよく調べれば安心できる商品があるかもしれない。
ただし、野菜ジュースはあくまで「野菜摂取の補助」。本来、野菜から栄養を取るべきなのだ。それはわかっているのだが、今回、野菜ジュースより生野菜のほうが硝酸態窒素が多く含まれていると知り、新たに「サラダ」の健康神話が揺らいでしまった。これまで、よかれと思ってサラダを食べてきたのに。野菜スティックなんか大しておいしくないけどポリポリかじっていた……。これからは、ゆで野菜にしよう。
(撮影:今井康一)
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