──カゴメの「野菜一日これ一本」のパッケージに、「濃縮野菜の力」「品名:野菜ミックス濃縮ジュース」「本品は国内で製造しています」と書いてあります。「濃縮還元」の製法を教えてください。
カゴメ:原料となる野菜・果実からジュースを搾汁した後、濃縮して水分を除き、保管した濃縮原料に再度、水分を加え、元の濃度に戻すことを「濃縮還元」と言います。
広く一般的に行われている濃縮法は「真空濃縮法」と呼ばれる方法で、減圧した装置内で果汁を加熱して水分を蒸発させる方法です。比較的低い温度でかつ短時間で濃縮できるため、「野菜一日これ一本」を含め、野菜・果実の加工工程で広く活用されている技術です。
そのほかの濃縮方法として「逆浸透濃縮法」や「凍結濃縮法」と呼ばれる方法があります。カゴメではトマトの濃縮において、逆浸透膜を活用した非加熱の濃縮法「逆浸透濃縮法」も使用しています。
「野菜一日これ一本」は海外産のみならず、国内産の野菜も使用しており、国内産においても野菜汁を濃縮・保管したものを活用しています。トマトジュース以外の市販の野菜ジュースのほとんどは、複数の野菜、もしくは複数の野菜と果実をブレンドして作られています。
原料となる野菜と果実は、それぞれ収穫される旬の時期が異なるため、年間を通して商品を生産するには、いったん濃縮して保管し、商品を製造する際にブレンドして製造する必要があります。収穫の時期、地域、品種などによる品質のばらつきがありますが、「濃縮還元」により、野菜と果実の品質のばらつきを少なくし、また還元する濃度を一定にすることにより、安定した品質の商品をご提供することが可能になります。
──「濃縮還元」をしない場合、栄養成分は変わりますか。
カゴメ:栄養成分は、「ストレートタイプ」でも「濃縮還元」でも、搾汁・殺菌の過程で、食物繊維やビタミンCが減ります。たとえば、カゴメの「ストレートタイプ」のトマトジュースと「濃縮還元」のトマトジュースでは、栄養成分表示はまったく同じ値です。
原産地の問い合わせが増えた2つの事件
──では、野菜の原産地について伺います。伊藤園の野菜ジュースについてホームページで調べたところ、中国産が見当たりませんでした。
伊藤園:これもちょっと歴史があります。2007年に中国から日本に輸入された冷凍ほうれん草から基準値を超える残留農薬が検出されたという事件が起きました。2008年1月には冷凍ギョウザ事件が起きた。
われわれの商品についても中国産の野菜が使われているのかという問い合わせが、当時、1日3000件ぐらい来まして、お客様が中国産の原材料を使っているのかいないのかを非常に気にされているということがわかりました。一部、トマトだけは中国産を使っていましたが、消費者心理に配慮して、2008年春からはいっさい、野菜については中国産のものは使っていません。
──原産地を見ると、アメリカ、ポーランド、オーストラリア……。日本も多いですね。
伊藤園:今はなるべく国産に切り替えています。ただ、国内で全部を賄おうと思っても、この量はちょっと賄えないのです。われわれが使わせていただいているニンジンを、青果ベースで換算すると、16万トンぐらいになります。国内のニンジンの収穫量が約70万トンですので、そのうち16万トンのニンジンが伊藤園のジュースに使われると、八百屋さんからニンジンが消えるといったことも一部では起きるような量なのです。
トマトも同様です。われわれが使うトマトは約14万トン。国内のトマトの収穫量は約60万トンですから、約4分の1に相当します。安定的にお客様に供給するために、現地に赴いて野菜をしっかり作り、それを濃縮して日本に持ってきているのです。
──残留農薬などの検査はどのようにしていますか。
伊藤園:現地でまず検査して、国内に入れて、品質管理部でロットごとに検査します。問題がないことを確認してから工場に送り、工場でミックスします。
──では、何か問題があったとき、どこの産地の野菜に問題があったのか、たどれますか。
伊藤園:トレーサビリティは確実に取れます。取れない原料は使いません。農家まで追えます。農家がその農薬をまいた量や肥料をまいた量を全部、記録してあります。
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