このような事件が数えきれないほど頻繁に起こる中、各事例に個別の事情はあるので一概に“傍観していた母親”を批判することはできないのかもしれません。しかし中には“助けられる立場にいたのに結局傍観した”母親も同罪かそれ以上だと感じることも多いのですが、母親はそのことに関して、多くのケースで何の罪も問われないといいます。
たとえば本件の事例では、数カ月前から、夫の子供への暴力はひどくなっていたと、事件後に証言しています。この暴力男との間にも子供をもうけ2歳になっていますが、この暴力男は実子には暴力を振るわなかったのです。
母親としての優先順位とは?
私はある友人から「中学生のとき、家庭不和で喧嘩の絶えない毎日が苦しくて、死んで楽になりたいとずっと考えていたけれど、自分がいなくなることで母親が悲しみ、母親の苦労がもっと増すことを思うともっとつらくて、いつも寸前で踏みとどまった」という辛い過去を聞いたことがあります。
これに対し、母親想いだったというこの中学生の場合、その母親の存在も歯止めにはなりませんでした。身体じゅうアザだらけという継父からの暴行が、母親の再婚以来続いていたのに守ってくれなかった母親です。自分なんかいなくとも母親は平気に違いないと感じたかもしれません。
明るい性格だったという中学生が暴力に耐え、あのような結末を選ぶまでに至った心情を思うと、私は胸が張り裂けそうになります。このような事例では母親にも様々な事情があるのでしょうが、私は子供を守るのが母親の第一の役割だと思います。姫山様のように似たような状況にいらっしゃる方には、暴力を振るう夫と一緒にいること以上に、子供を守ることを優先視して欲しいと思います。
以下は以前のコラムでも登場した知人の話ですが、彼女の長女が父親を異常に嫌い、妹にまで暴力を振るうようになったときのことです。ともかく娘の暴力を治めることが先決だと夫婦で話し合い、娘の無理難題を聞き入れて、夫だけ近所のアパートに移り住むことにしました。そして徐々に時間をかけて話し合い、良い方向に解決しつつあるという事例です。
有名な歌手と女優のそれぞれが息子を連れての再婚では、夫の連れ子が妻の連れ子に辛く当たり、暴力も止まなかったそうです。妻は泣く泣く、自分の連れ子を説得して、彼を全寮制の学校に入れたそうです。テレビの対談番組だったのですが、その時の様子を語るだけで、彼女は涙を流していました。
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