"低温発酵熱"こそが、社会を変えていく コウノトリのまちが地味に進めたこと(下)

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坂之上:身内で喧嘩になるわけですね。純粋に一生懸命に頑張っている人たちの間で。一生懸命だからこそ、よく起こることですよね。

中貝:だけど仲間を増やしたり、長く続けたりしないと結果を得ることはできない。そのためには、頭でわかってもらうだけではダメなんです。ハートに響くようにするにはどうするか考える、あるいはアプローチを変えて利益にも訴える。

坂之上:仲間も増やす、ハートも動かす、経済も強くする、「も」が沢山ですね。

中貝:以前、河合隼雄さんが新聞か何かでおっしゃっていたんですけど、社会を変えるのは「低温発酵熱」なんだと。

坂之上:「低温発酵熱」?

中貝:「低温発酵熱」というのは、麹(こうじ)がふつふつと発酵して、少しずつお酒に変わっていくような熱。常温よりちょっと高いくらいにおだやかで、ずーっと時間はかかるけれども、でも確実に化学反応が起きていて、後戻りをしない。ある日うまい酒ができている。そういう地道なことだというんです。

坂之上:常温よりちょっと高いくらいにおだやかで、でも確実に化学反応が起きる温度、ってわかりやすい例えですね。頭でわかって一瞬のうちに燃え上がるけれども、すぐに冷めてしまう「イデオロギー熱」では、社会を変えることはできない。

短期で結果を出そうとする制度には、飛びつかない

中貝:ほんとうに納得したのなら、もう誰かのためとか、誰かに言われたからとかじゃないわけですよね。自分ごとになっちゃってるので、自分のために動く。それはすごい原動力なんですよ。

坂之上:たしかに。

中貝:ただし、自分ごとになるまでには、時間がかかる。

坂之上:そこにもっていくまでにも、時間がかかる。

中貝:だから国がなにか新しい制度をつくった時、私は乗らないことがよくあります。豊岡の波長に合わないんです。ばたばたっと、短期で結果を出そうとするので。たとえたくさん補助金をくれるといわれてもやらないことにしています。

坂之上:断っちゃうんですか?

中貝:はい。私たちは私たちのスピードでやっていきたいと思います。

やっぱりね、励ましあって、「あっちだよ」と中間地点を示しながら歩んでいくことが大切だと思います。こういうことが必要なのは、市長だけに限りません。みんなでやるのが大事なんです。

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