私は、一度しかない人生、変化に応じて年相応の自分探しをし続けることが大切だと思っています。大学生は大学生の、若手社会人は若手社会人の、中堅社員は中堅社員の、定年したら定年後の「自分探し」をするべきなのです。継続的に、自分が本当にやりたいと思えることは何か、何で幸せを感じるのかを追求する、というイメージです。
このように、自分起点の「生きる目的=志」を意識していくことの重要性は、今後、ますます高まってくるでしょう。現在の日本は、少子高齢化、経済の低成長、産業の空洞化といった、厳しい状況に入っており、自ら何かをつかみに行かなければ、誰も何も与えてくれない状況になっているからです。しかし、一般的に受験勉強の影響を強く受けた日本人の中には、人から与えられた問題に正しい答えを出すことには慣れていても、自らの意志として、何を成しえたいかといったことにしっかりと向き合い、考えることは不得手という人が多いのではないでしょうか? その結果、志を持たないまま、少なくとも意識をしないまま、淡々と時間が流れていくといった状況になりがちです。
もちろん志を意識しなくても生きていくことはできます。
ですが、私が勤務するグロービス経営大学院では、自分が進むべき方向、やりたいことを「志」と呼び、「自分らしい志」を作り上げていくことを重要視しています。そして実際にさまざまな授業や活動を通じて、大学院生の皆さんに自分自身と向き合ってもらう時間と機会をたくさん設けています。
「何のために生きるのか?」「限られた時間で社会にどのように貢献するのか」をしっかりと見定めることが、より充実した人生を送ることに役立つと考えているからです。ビジネススクールで一生懸命学んでさまざまなスキルを身に付けたとしても、それをどのように活用していくかを見定めないかぎり、宝の持ち腐れになってしまう可能性もあるでしょう。
「何のために生きるのか?」が見つかる重要な軸
ここまでで、何度か「志」という言葉を使ってきましたが、皆さんは、「志」と聞くとどのようなイメージを抱くでしょうか。個人名を挙げるなら、坂本龍馬、松下幸之助、稲盛和夫といった偉人を思い浮かべる方も多いかもしれません。あるいは、志を胸に抱いて生きていく姿にある種のあこがれを抱いても、自分には志と呼べるようなものはない、私はまだ志を見つけ出すことができていないと落ち込んだり、何も考えたくないと逃げてしまう人も少なくないかもしれません。
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