ここで大切なのは「自分らしさ」ということです。他人と比較することが当たり前になってしまっている私たちは、生きる方向性まで人と比べていては、誰の人生を生きているのかさえ、わからなくなってしまいます。志はあくまで極めて個人的なものであり、徹底的に「自分探し」をして、「らしさ」を追求することが大切なのです。
しかし、一方でその「らしさ」を見据えることは、時に非常に難しくもあります。先にお名前を出した方々は、いわば「志」有段者。その域に達していない人からすれば、どうやって志を醸成していくのかの説明がないままに重要性だけを説かれても、困ってしまうでしょう。
調査からわかる、「志」の成長過程
グロービスでは、そのような状況にある多くの方に、何か少しでもヒントを提供できないかと、数十名のインタビューを行って志の醸成過程を明らかにしました。その中身を、ここに少し紹介します。
私たちの調査によると、「志」は、突然のひらめきで見つかったり、急に天から降ってくるようなものではありません。多くの人は、少しずつ「小志」とも言えるものを積み上げ、育てています。そして、それがいつか「大志」に昇華されていくというプロセスをたどるのです。
坂本龍馬について見てみましょう。もともと土佐藩の浪人だった龍馬が抱いた最初の志は、江戸に出て剣術を学ぶということでした。決して大政奉還、明治維新などという志を最初から抱いていたわけではありません。さまざまな経験をし、さまざまな人に会う中で、志が変化していったのです。
松下幸之助しかりです。最初、松下幸之助が作ったのは電球のソケットを作る会社であり、世界平和を志して起業したわけではありません。
多くの人が、小さい志を少しずつ積み上げていっているのです。
こういった調査を基に、私は志という言葉を「一定の期間、人生を懸けてコミットできるようなこと(目標)」と定義しました。ここで、「一定の期間」というのは、あまりにも短いと行動目標になってしまうので、イメージとして1年~数年程度を想定しています。「人生をかけてコミット」という部分は「時間」や「マインド」など、自分でコントロールできる資源のかなり多くの割合を、自主的に割いて、何かに取り組んでいることとしています。
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