10年後、「無業」に陥らないため今すべきこと 城繁幸と西田亮介、「若者と仕事」を語る(後編)
西田:個人的には、従来の日本型雇用にはよかった点も多々あると思っています。身の回りの人とベタっとした、しかしポジティブに言い換えれば、仕事と生活が密接した、深い人間関係を作っていくのが好きだという人もいます。
それに、僕自身、期限付きの准教授ということで、これまでのキャリアは大学業界という少子高齢化の影響を強く受けた、かなり競争的な市場で積んできましたし、これが性に合っているとも思いますが、どこかで「疲れたな。ちょっと落ち着きたいな」と思うこともないわけではありません(笑)。そんなときに、給料は少ないかもしれないけれども安定した日本的な長期雇用の職に就きたいなと思うかもしれない。
大事なのは、多様な選択肢があるということだと思うんですよ。すべてを競争的な市場に塗り固めてしまうのではなくて、徹底的な競争を背景にした雇用環境もある一方で、落ち着いた雇用環境もあるという混合的な雇用環境が理想的なのかなと。
城:ここは勘違いされがちなのですが、私は終身雇用制度を絶対にダメだと否定しているわけではないんです。個人的に好みではないですが、そういう雇用制度を採用する企業があってもいい。それは企業の自由です。ただ、国が法律で「終身雇用をしましょう」「65歳まで雇いましょう」と決めているのはおかしいと言っているんです。
働き方のバリエーションを増やせないか
城:こうした労働条件は、雇用する側と雇用される側が自由に交渉してお互いに納得する形で決めていくべきでしょう。そして、そうした自由化が行われると、きっと雇用形態も多様化すると思います。ゼロか1か、白か黒かではなくて、様々な条件で働けるようになる。そうなれば、無業者も減るし、失業者も再雇用されやすくなるはずです。
西田:働き方のバリエーションを増やしていくというご提案には大賛成です。正社員か無業かではなくて、週3日や4日だったら働けるという人が能力を発揮できる場を作る。そういう意味では、従来型の「フルタイム正社員」だけでなく、職務や勤務地が限定された「ジョブ型雇用」などが、もっともっと広まるのはいいことだと思います。
そして長い目で見れば、僕らがごちゃごちゃ言わなくても、「雇用制度の自由化」は進んでいくのではないでしょうか。そうでなければ、企業は生き残れませんからね。