10年後、「無業」に陥らないため今すべきこと 城繁幸と西田亮介、「若者と仕事」を語る(後編)

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西田:ただ、僕の予想では、その過渡期において、どうしても弱い人にしわ寄せがいく。普通のことはできるけれども何か専門的な技術を持っているわけでもない、競争的な気質ももっているわけでもない、という人が取り残される。

誤解を恐れずにいうと、偏差値40から55くらいの、もっともボリュームが多いところに、そういう人たちがたくさんいる。そして、実際に彼らは無業者予備軍になっていたりもするのですが、やはり誰しもがきちんと働くことができて、快適で幸せな生活を送れる社会が豊かな社会ではないでしょうか。そうでなければ、ぎすぎすした過剰競争の社会が訪れ、社会の分断や不安定化を招く。特に欧州の現代史はそれを示唆しています。

学生のために「新卒採用やめます宣言」を

西田:それで、もっとも効果的なのが「新卒採用やめます宣言」を企業や経団連が発信することではないかと考えています。

今の日本の教育は、初等教育から大学教育まで一貫して「横並び」をよしとしています。それは従来の日本型長期雇用においては、ある意味ぴったりの教育だと思いますが、これからは様々な働き方が提示されるとなると、いろいろと齟齬が出てくるでしょう。労働市場に出た瞬間に突然「はい、競争してください」と言われても、戸惑う人ばかりになるはずです。

首都圏以外では、横並び感覚の存在をしばしば感じます。実際、関西でも、「体育会に入っていれば、就職は大丈夫!」といった感覚はまだまだ非常に根強い。そんな中で、ある日、学生が主体的に自分のキャリアを考えるようになるのかというと、ちょっと想像がつかない。

それに昨今では学生は「大学の先生は好きなことだけやってきた人たちなので役に立たない」という誤解していたりさえしますから、僕たちが言っても聞く耳を持たないかもしれない。僕たちの世代の大学教員だと、30代前半で複数回の転職を経験していたり、僕もそうですが前職が大学以外の職場だったりするのも当たり前ですけどね……。

城繁幸●人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。

だから一見厳しいようですが、多くの学生やご両親なども関心をもって動向を見ている大企業や業界団体のほうから、「時代は変わりました。新卒一括採用は辞めます。それぞれ自分にあった会社を選んでください」というくらいのメッセージを十分な準備期間を設けて出してくれたほうが、学生のためにもなるし、それは会社にためにもなると思うのです。

:確かに、「優秀な人材を採用する」という企業の側に立って考えても、新卒一括採用はなくなったほうがいいですね。ただ一方で、企業からすると「とにかくラクだ」というところもある。期限が区切られていますし、ある程度の有名企業であればその時期になると勝手に希望者がわらわらと集まってくるわけですから。

それに、同じ日に内定式があるので、「踏み絵」まで用意されている状況です。もちろん「新卒一括採用」なんてナンセンスなものは、近い将来自然となくなるはずですが、「一気に変える」というのであれば、どこかの企業が宣言してしまうのも面白いかもしれませんね。

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