ドーム"伝統の一戦"を快適に過ごす裏ワザ 12球団のホームグラウンドへ行ってみた<8>

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今回は人酔いでギブアップすることなく、観客が出て行ったあとのドームをゆっくり見物。人がいなくなると、最悪の居住性のこの球場も良い球場に見える。

それでも、神宮ですら外野は疲れるからパス、などと言っている根性なしの筆者にこの球場での観戦はあまりにもしんどい。この球場は血気盛んな人にふさわしいように思う。

2回に分けて取材した結果、女子トイレの数は、1階、2階、4階の各内野コンコースと外野で合計13カ所あり、個室は100%洋式で169個。和式が1つもないのはこの球場だけだ。球場キャパ比で計算すると0.36%。カウントできなかった個室もあったうえで大体0.4%以上というのが標準なので、他球場に比べると数は少ない。

最後に経営の話をしておきたい。敢えて言うまでもないかもしれないが、東京ドームと巨人は何の資本関係もない赤の他人である。東京ドームは読売グループの子会社だと思っている人がたまにいるが、巨人はただの店子。球場内の飲食収入や広告看板収入は全て東京ドームのものだ。東京ドームは柱1本にいたるまで広告スペース。このどん欲さは他のどの球場よりもすごい。

選手マネジメントは球団、経営は読売本社

一方、球団経営会社の読売巨人軍に入るのは、チケット売り上げとテレビ放映権、それにグッズ収入くらいなのだが、チケットは読売本社のスポーツ事業部が全て買い上げて差配し、放映権は放送してもしなくても全試合分を日本テレビが一括で買い上げる。

読売グループが業界紙に公表している巨人の年商は、毎年概ね240億円。似たような観客動員数の阪神の推定年商のほぼ倍になるのは、チケットと放映権の一括買い取りがあってなおかつその単価が高いからということになるのだろう。

球団はもっぱら選手のマネジメント、経営はスポーツ事業部という役割分担になっているという点で、巨人は12球団の中では極めて特殊な存在と言っていい。それだけに、「自立しているのは巨人、阪神、広島だけ」という定説にも、違和感を禁じ得ないのだ。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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