──食欲まで増すとは、太るわけですね。3つ目の「依存性がある」とは?
私が人工甘味料でいちばん悪影響があると考えているのは、依存性です。人工甘味料にはコカイン以上の強い依存性があると言われています。私たちはおいしいものを飲んだり食べたりすると、脳の「快楽中枢」と呼ばれる神経系からドーパミンなどの神経伝達物質が分泌され、満足感を得ます。そして「もっと飲みたい」「もっと食べたい」と思う。
ところが、強い欲求が続くとドーパミンの分泌をコントロールできなくなり、依存性や中毒になります。たとえば、薬物を投与するとドーパミンが分泌され、幸福感や快楽を得られますが、ドーパミンが枯渇すると、また薬物が欲しくなる。それとまったく同じ作用で、人工甘味料の甘さは一時的に満足感を得られますが、枯渇すると、また人工甘味料が欲しくなる。そうして「甘み依存症」になっていくのです。
サッカリンを使ったマウスの実験では、コカイン以上にサッカリンの中毒性が強いことがわかりました。サッカリンに限らず、そのほかの人工甘味料にも強い依存性があると考えられています。
──好きだから飲んでいるというより、知らず知らずのうちに「甘み中毒」になっているのですね。
人工甘味料の甘みは独特です。以前から使われているアスパルテームなどの人工甘味料には後味があるため、アセスルファムKと一緒に使うことが多いのですが、ダイエット・ソーダ(人工甘味料入り炭酸飲料水)の多くには、比較的新しいスクラロースが含まれています。スクラロースは後味が少なく、単独で使用できるため、飲料メーカーの消費量が急激に増えています。
うつ病発症! 神経伝達物質が減る?
──おいしくてカロリーを抑えられるという「うまい話」はない。
「まずい話」ならまだあります。肥満や糖尿病のほかにも病気のリスクがある。アメリカ国立衛生研究所が約26万4000人の中高年者の疫学調査をしたところ、甘いドリンク、特にダイエット・ソーダはうつ病のリスクを高めることがわかりました。毎日4缶以上飲んだ人たちは、飲まなかった人に比べてうつ病の発症が31%も高くなったのです。
──なぜうつ病になるのでしょうか。
疫学調査というのは、生活習慣のアンケートを何年も取った結果、こういう病気の人が多いという傾向がわかるもので、この結果をもたらした詳しいメカニズムはまだわかっていません。
ただ、アスパルテームは体内で代謝されたときにフェニルアラニンやアスパラギン酸、メタノールに分解されるのですが、過剰なフェニルアラニンやアスパラギン酸は、神経伝達物質のセロトニンやドーパミンなどを作るためのチロシンやトリプトファンが脳へ送られるのを妨害します。それで神経伝達物質が減り、うつ症状が現れると考えられます。
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