普通の砂糖はぶどう糖と果糖が結合した二糖類で、異性化糖はぶどう糖と果糖の混合液で単糖類です。
普通の砂糖は、まず腸内でぶどう糖と果糖に分解されてから、それぞれ吸収されますが、異性化糖はもともと最小単位の単糖類なので、ぶどう糖、果糖がそれぞれすぐ吸収されます。清涼飲料水の異性化糖は、一気に果糖を摂取するので注意が必要です。
ぶどう糖と果糖は体への作用や処理の仕方がまったく違います。ぶどう糖の場合、小腸から吸収されて血液に入り血糖が上がるという代謝になりますが、果糖の場合は直接、血糖は上がらず、ほとんどが肝臓で代謝されて、余った果糖は脂肪肝になりやすい。つまり、血糖は上がらないけれど、肝臓に影響を及ぼし内臓脂肪になります。
さらに、果糖を取った場合、ぶどう糖に比べて満腹感を感じません。清涼飲料水を飲みながら、お菓子やアイスクリームを食べたりする人も多いのではないでしょうか。そうした違いを自覚して、消費者は糖分を選ばないといけないのです。
──「選ぶ」と言ってもどうやって?
パッケージの「原材料名」のところに書いてありますから、見てください。
ミシェル・オバマが異性化糖と戦う!
──では、さかのぼって、人工甘味料が使われる前は、飲料メーカーはなぜ普通の砂糖ではなく、異性化糖を使うようになったのでしょうか。
人類の歴史は、糖を獲得するための戦いの歴史でもあります。さとうきびをどんどん作ってきました。しかし、1950年代にキューバ革命が起きて、アメリカはキューバから砂糖を輸入できなくなった。そこで砂糖の代わりに異性化糖が作られるようになりました。
異性化糖はとうもろこしなどのでんぷんを酵素処理して生産されます。「高フルクトース・コーンシロップ」とも呼ばれます。「シロップ」という名のとおり、液体なので、ドリンクだけでなく食品にも簡単に混ぜることができる。この製法は日本人が発明したんですよ。
これが1970年代にアメリカに導入されて、政府はとうもろこしの栽培に助成金を支給し、生産を後押ししました。そうして、さまざまな清涼飲料水に使われるようになり、供給がどっと増えたのです。
今は遺伝子組み換え技術によって、とうもろこしを安く大量に生産できるようになったので、ますます異性化糖の清涼飲料水が作られています。それでアメリカ人の肥満が社会問題となり、ミシェル・オバマが、異性化糖を使った清涼飲料水の排除運動をしているほどです。
──ある意味、糖との戦いが続いている。肥満に悩む日本人も「ぶどう糖果糖液糖」「果糖ぶどう糖液糖」に要注意ですね。
「どれもこれも人工甘味料と異性化糖が入っているじゃないか。何も飲むものがなくなるよ」
明日は、出世街道をひた走るB郞が飲んでいる「野菜ジュース」の裏側を紹介する。
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