ところで、そんな素晴らしい古典思想を持つ国、中国で、今、大人気なのが稲盛和夫氏の経営哲学だ。
中国語に訳された著書は、累計350万部の大ベストセラーを記録している。日中関係悪化の折でも、特別コーナーが設けられている書店まである。6月に浙江省杭州市で行われた稲盛経営哲学報告会には約2000人の中国人経営者が集まった。登壇した経営者は稲盛イズムをどのように実践しているか、涙を流しながら紹介し、大きな盛り上がりを見せた。
今、なぜ、稲盛和夫氏の経営哲学がこんなにも中国人に人気なのだろうか?
「大会に集まった中国の経営者には、事業で成功して大きな財を成した方が多い。そんな経営者たちに、稲盛の『利他の心』という考え方は強く突き刺さるようだ」と言うのは、京セラ執行役員兼京セラ(中国)商貿総経理(社長)の後藤雄次氏。
中国では、近年の経済発展で多くの富裕な経営者が生まれた。彼らは、事業で得た富で、別荘を買い、高級車を買い、高級品を買い集め、世界旅行に出かけ、あらゆる贅沢を経験している。
しかし、どれだけ贅沢をしても、満足が得られない。幸せを感じない。そんな中、稲盛経営哲学に出会い、私利私欲を抑え、世のため人のために尽くす『利他の心』を知って実践することで、人生に喜びを感じるようになるのだと言う。
中国で利他の心?
ただ、これは「にわかには信じがたい」というのが日本人の感想だろう。
今夏、米食材卸大手の傘下にある上海福喜食品で、消費期限切れの食肉使用やずさんな管理発覚し、問題になった。街にはニセモノを売る店が平然と軒を並べ、路上では詐欺まがいの商品が売られている。食品偽造も日常茶飯事で、下水からくみ上げられた油が調理用として売られている。
まさに、儲かれば何でもありの国。そんな国で「私利私欲を捨てる」?「利他の心」?
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