「中国はもうだめだ」
「いやいや、この巨大市場はこれからだよ」
会議室で、居酒屋で、そしてSNS上でも何万回も行われてきた問答だろう。
中国の悪いニュースが流れると、ほら見た事かと「中国となんて縁を切るべきだ」と語気を強めてまくしたてる人たち。それに対して、「いやいや、中国にも中国の良さがある。知れば分かる。」と反論する中国在住者。「坊主にくけりゃ」論と「あばたもえくぼ」論の、不毛な論争も多い。
そんな中、冷静にリスクを見つめながら、中国の“フロンティア”にチャレンジする企業がある。
なぜウルムチに拠点を開設?
中国新疆ウイグル自治区、ウルムチ市。上海から直行便の飛行機で約5時間の、中国最西部の大都市。独立運動暴発の可能性があると言われるこの地に、東証1部上場の商社「蝶理」が拠点開設を決めた。
2000年以降、大手企業がここに拠点を開設するのは稀な例である。
「ウルムチに進出する目的は、①拡大する中国西部から中央アジアの跨境市場を捉えること、②ウルムチにおけるリスクを自分たちの目でモニタリングすること、③ヨーロッパとアジアをつなぐ拠点を押さえること。この3つです。」
同社の取締役・中国総代表の井上邦久氏はそう語る。
ウルムチ市の人口はおよそ250万人。中国の中では、そこまで大きな都市ではない。しかし、駅前には多くの高層ビルが建ち、現在、地下鉄や高速鉄道も建設中。中国の次期5カ年計画で最重点都市の1つとなることが予想され、大発展が期待されている都市なのだ。
発展の理由は、資源が豊富な中央アジアの窓口になる都市であることに加えて、中央政府のある“裏の思惑”も見え隠れする。
ウルムチの人口の3割は、ウイグル人を中心とした少数民族。漢族との間で、民族対立の火種を抱え、テロとみられる爆破事件も頻発している。
中央政府としては、ここに投資をして、経済的な豊かな土地にすることで、独立運動や民族対立を封じ込めようと考えている節もある。経済成長はすべてを隠すということだ。
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