商社の蝶理、「ウルムチ進出」の狙いとは?

日本人が知らないニューシルクロードの魅力

ウルムチでは、企業は、職員の少数民族を一定割合雇用することが義務づけられている。そのため、社員食堂では、イスラム式の食事が提供され、和諧が第一義として語られる。

この和議の根底にある民族関係の火種を、井上氏は「マグマ」と表現する。

「ここに拠点を作って、自分たちの目で地下のマグマの状態を常に“定点観測”してこそ、中国ビジネスのリスクに対して、自信を持ってお客さまにお話できます。リスクが存在する一方で、大きな可能性もある地域です。緒に就いたばかりですが、大事にしていることは伝聞ではなく自らの目で見てビジネスする姿勢です」

ウルムチはヨーロッパにも近い

中国西部から中央アジアというと、一般の日本人には馴染みのない地域。地図を見て、どこが新疆ウイグル自治区で、どこがキルギスタン、どこがカザフスタンかを認識できる人は少ないのではないか?

しかし、よく地図を見てみると気づくのが、この地域、ヨーロッパと地理的にはそう遠くない。それもそのはず、ここは古くから、中国とヨーロッパを繋ぐ交易路だった地域。そう、シルクロードだ。

近年、ウルムチからカザフスタン、ロシアを抜けてヨーロッパに至る鉄道輸送のルートが発展し、従来の天津港からの海上輸送と比べて半分の時間、飛行機の1/6のコストでの物流が可能になってきた。まさに、「ニューシルクロード」が形成されつつある。

そんな状況の中、昨年8月には、フォルクスワーゲンのウルムチ工場が稼働した。

今年9月1日には、4回目となる亜欧博覧会(チャイナ・ユーラシア・エキスポ)」が開幕したが、参加者の国籍は、昨年の50カ国から60カ国に拡大し、その注目度が伺える。

ただし、井上氏の話では、「この会場で目立っていたのはヨーロッパ、そして韓国の企業ばかり。日本企業のブースは1つもなかったようだ。」とのこと。

大きなリスクのあるところに、大きなリターンも存在する。それは投資の原則だが、課題はリスクとどう付き合うか?だ。この部分で、痛し痒しの状態になっている日本企業も多いように思える。

「現地をその目で見る」という蝶理の考え方は、シンプルだが本質を突いているように思う。

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