基調講演が終わった後は、パネルディスカッション。ここでは4つのテーマが議論された。簡単にまとめよう。
実質的にあまり変わらない?中国にどう対処すべきか
まず第1は「レアアースの価格」について、である。現在、レアアースの価格は暴騰後に暴落、この約3年底値圏にある。中国企業の意見はこうだ。「資源の価 値が正当に評価されないのが底値から脱しない原因だ」。
一方、私は「レアアース産業では資源が重要なのではなく、新規用途の需要開発がない限 り、レアアース原料の付加価値は出てこない」ことを指摘した。残念ながら、中国関係者の多くの発想は「資源を囲い込むことしか考えが及ばない」ため、「原料を不当に安い価 格で供給させられている」 今の市場に、不平と不満を感 じていた。
第2は、「急な価格変動をどう回避するか」。そもそも中国側の考え方には、投機なども認められている自由取引の枠組みの中でやっているのだから、問題ないという考え方がある。また商務省の介入や、外交カードにレアアースを利用する発想がある限り、価格の乱高下は今後も回避できないとの懸念が残ったままだ。私は、「需要側と供給側が共存共栄できる市場構造を目指すしか、価格安定の道はない」と発言した。
第3は、「WTO紛争後、廃止することになったEL(輸出ライセンス)制が実際なくなったら、どんな影響が出るか」である。
私の予測では、実際は、商務省は出来るだけEL制度を外す時期を先延ばしにして、その間に資源税を導入 、事実上安値で取引できないように中国の国内市 場の支 配を強化するのではないかと思う。
結局、海外の資源企業は経済合理性の範囲の中で価格競争力を強めるしか方法はないかもしれない。もし、中国側がWTO裁定を受け入れた柔軟な新政策を打ち出さないようなら、共存共栄ができず、大手レアアース企業の倒産も今後視野に入ってくるかもしれない日本の産業界も、従来からの方針(資源確保、3R運動、代替材料の開発など、国家備蓄)を愚直に進めるしかない。
最後の4つ目は、3つ目ともからむが、「もし中国以外の資源開発企業が、資源開発に失敗したら」というものだ。これは「米国のモリコープ、豪のライナス社という2大企業が万一破綻したら、どうなる」という問題設定にかなり等しく、ディスカッションは一般論に終始して終了した。
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