「日本が、中国に勝った――」。女子サッカーや、女子バレーボールの話をしているわけではない。8月7日にさかのぼるのだが、読者の皆さんは「世界的な機関」で、「ある重要な決定」が下されたことをご存じだろうか。
中国に対する、歴史的な勝利の意味
ある重要な決定とは何か。中国に対してWTO(世界貿易機関)が下した決定である。2012年3月、日米欧は「中国が、レアアース(希土類)、タングステン、モリブデンに関して、不当な輸出制限をしている」として、WTOに提訴。これに対して、中国は環境や天然資源の保護などを理由に、輸出制限が正当なことを主張してきた。
実は、今年3月にはWTOの「紛争処理小委員会(第1審に相当)で中国が敗訴。中国は提訴したが、8月7日、上級審にあたる紛争処理上級委員会でも、「中国の輸出制限は、国内産業を恣意的に優遇する政策である」と断定、日米欧の訴えをほぼ全面的に認めたのだ。WTOの紛争処理は2審制なので、日本を含む日米欧の勝利が確定した、というわけなのだ。
最終的な上級委員会の報告書は、8月29日に開催されるWTO紛争解決機関会合において正式に採択される見込みだ。同日は貿易紛争史において、歴史的な1ページを飾ることは間違いない。
では中国側の敗訴によって、何が起きるだろうか。結論から言えば、EL(輸出ライセンス)制度の撤廃と、輸出税の撤廃は避けられない見通しだ。長期的に見れば、中国からのレアメタルの輸出ドライブがかかり、供給の安定化が期待できそうだ。一方、短期的には国際市況の暴落や混乱も場合によってはあり得る。
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