日本で根深い「ジョブ型雇用は解雇自由」の勘違い 理由すらなく解雇できるのはアメリカのみ

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ジョブ型雇用と解雇の関係について解説します(写真:【IWJ】Image Works Japan/PIXTA)
近年、日本でさかんに議論されているのが「ジョブ型雇用」です。ところが、「おかしなジョブ型論が世の中にはびこっている」と指摘するのが、ジョブ型という言葉の生みの親である、労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郞氏です。新著『ジョブ型雇用社会とは何か 正社員体制の矛盾と転機』を上梓した濱口氏が、今回は解雇について解説します。

アメリカを除くすべての国に「解雇規制」がある

正社員の標準コースにおける出口である定年に対し、非標準的、あるいはむしろ異例な出口に当たるのが解雇です。解雇については、ただでさえ多くの議論があるうえに、ジョブ型をめぐって相当誤解に満ちた議論がさまざまに展開されているため、それらを解きほぐすために丁寧な作業が必要になります。

日本以外のすべての国はジョブ型社会ですが、そのうちたった1カ国、アメリカを除けば、すべての国に解雇規制があります。アメリカは確かに随意雇用原則といって、どんな理由であっても、あるいは理由なんかなくても、解雇することが自由です。しかし、それがジョブ型の特徴だなどと主張するのはほとんど虚構と言っていいでしょう。

アメリカ以外のすべてのジョブ型の諸国と日本は、解雇規制があるという点で共通しています。もちろん解雇規制とは解雇禁止ではありません。日本もアメリカ以外のジョブ型諸国も、正当な理由のない解雇はダメだと言っているのであって、裏返していえば、正当な理由のある解雇は問題なく有効なのです。その点でも共通しています。

しかしながら解雇については、法律で解雇をどの程度規制しているのかということよりも雇用システムの在り方が大きな影響を及ぼしているため、ある側面に着目すれば確かにジョブ型ではより容易な解雇が、メンバーシップ型ではより困難になるという傾向はあります。

ここのところは、1つひとつ腑分けして議論をしていかなければなりません。解雇の問題は雇用システム論の最大の関門であり、これをきちんと解きほぐせるか否かが極めて重要です。

次ページ問題を解きほぐすために基礎に立ち返る
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