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日本で根深い「ジョブ型雇用は解雇自由」の勘違い 理由すらなく解雇できるのはアメリカのみ

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  • 濱口 桂一郎 労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長
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そうではありません。初めにジョブありきのジョブ型社会であることに変わりはないのです。

ただ、今回のコロナ禍、2008年のリーマンショック、古くは1973年の石油ショックのように、経済循環構造の外部から突然やってきた外的ショックによる労働需要の急激な縮小に対して、そのショックが収まれば同じジョブを再開することが見込まれる場合、その間国の補助金を注ぎ込むことによって雇用を維持するのです。アメリカに比べれば、ジョブの捉え方がより長期的なタイムスパンに置かれているということができるでしょう。

そもそも、日本で1974年に雇用調整助成金(当時は雇用調整給付金)が作られたとき、そのモデルになったのは西ドイツの操業短縮手当でした。発想はヨーロッパ式です。

衰退産業から発展産業への労働移動を企業内部で実施

では日本の雇用調整助成金はヨーロッパの雇用維持スキームとまったく同じなのかといえば、そうでない面があります。

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正確にいえば、当初の制度ができたときにはドイツの引き写しだったのですが、1977年の改正で目的が一時的な景気変動への対応から中長期的な産業構造の変化に拡大されました。

衰退産業から発展産業への労働移動は外部労働市場を通じるのがジョブ型社会の常識ですが、その労働移動を企業内部でやろうというのです。雇用調整助成金で休業しながら教育訓練を受け、企業内の新たな事業に移していこうという考え方です。

これこそ、雇用契約でジョブが限定されていない日本ならではの発想です。ヨーロッパの雇用維持スキームにはそんな発想はありません。危機が去ったら元のジョブを再開するというだけです。

いずれにしても、ジョブ型社会において整理解雇は最も正当な解雇理由ではありますが、ヨーロッパ諸国では中期的にジョブが存在し続けると見込まれる限り、一時的な景気変動に対しては雇用維持型の対応をすることが珍しくありません。

そのこと自体はジョブ型であることと矛盾するわけではないのです。

前回記事:多くの日本人が真逆に誤解「ジョブ型雇用」の本質

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