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日本で根深い「ジョブ型雇用は解雇自由」の勘違い 理由すらなく解雇できるのはアメリカのみ

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  • 濱口 桂一郎 労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長
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もっとも、日本ではそういう言葉の正確な意味でのリストラよりも、会社にとって使えない社員をいかに追い出すかという意味でリストラという言葉が使われる傾向があります。

というよりも、そもそも雇用契約で職務が限定されていないメンバーシップ型社員にとっては、会社の中に何らかの仕事があれば、それがいかなる仕事であれ、そこに配置転換される可能性があるのです。その可能性があるのに解雇しようというのは許しがたい悪行だとなるのは、必然的な論理的帰結です。

言い換えれば、会社が絶対的に縮小し、絶対的に排除される労働者が不可避的に出ざるをえないという状況にならない限り、リストラが正当化されるのは難しいということになります。

正当な理由のある解雇はよい、正当な理由のない解雇はダメ、というまったく同じ規範の下にありながら、ジョブ型社会とメンバーシップ型社会がリストラに対して対極的な姿を示すのは、こういうメカニズムによるものです。それを解雇規制の有無で論じるのはまったくミスリーディングと言わなければなりません。

雇用調整助成金はメンバーシップ型の最たるもの?

さてこういう話をすると、景気が悪化したときに雇用を維持するための雇用調整助成金こそメンバーシップ型の最たるものであるかのような議論に向かいがちなのですが、実は必ずしもそうではありません。ここはきちんと腑分けして議論をすべきところです。

2020年に世界中を新型コロナウイルス感染症が襲い、多くの企業で労働者が休業を余儀なくされたとき、日本のみならずドイツ、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国でも、操業短縮手当など似たような雇用維持スキームが発動され、やるべき仕事がない状態で雇用関係が維持されました。

むしろ、デジタル化の遅れからなかなか申請や支給が進まなかった日本に比べて、わずか1カ月ほどで支給対象者数が各国とも1000万人に達するほどでした。

これに対し、アメリカでは仕事がなくなった人々は片っ端から解雇され、失業者数が一気に2000万人に上りました。アメリカのように仕事の切れ目が雇用の切れ目というのがジョブ型だとすれば、仕事がなくても雇用を維持しようとするヨーロッパ諸国はメンバーシップ型なのでしょうか。

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【答えは?】

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