日本で根深い「ジョブ型雇用は解雇自由」の勘違い 理由すらなく解雇できるのはアメリカのみ
問題を解きほぐすためには基礎の基礎に立ち返るのが一番です。
ジョブ型とは初めにジョブありきで、そこにヒトをはめ込むものです。従って、労使いずれの側も、一方的に雇用契約の中身を書き換えることはできません。つまり、従事すべきジョブを変えることはできないのです。
定期人事異動が当たり前で、仕事などというのは会社の命令でいくらでも変わっていくものだと心得ている日本人に一番よくわかっていないのが実はこの点です。
いわば、借家契約が家屋という具体的な物件についての賃貸借契約であって、具体的な家屋を離れて、「大家といえば親も同然、店子といえば子も同然」という人間関係を設定する契約ではないように、雇用契約もジョブという客観的に存在する物件についての労働力貸借契約なのであって、具体的なジョブを離れて「会社といえば親も同然、社員といえば子も同然」という人間関係を設定する契約ではないのです。
リストラが最も正当な理由のある解雇
大家が借家を廃止して、その土地を再開発してマンションを建てると言われれば、少なくともその借家契約は終わるのが当たり前です。それと同様に、会社が事業を再編成して、そのジョブは廃止すると言われれば、その雇用契約は終わるのが当たり前です。
大家にはどこか別の自分の所有する借家に住まわせる義務があるわけではありませんし、店子のほうもそれを要求する権利があるわけではありません。同様に、会社にはどこか別のジョブにはめ込む義務があるわけではありませんし、労働者にそれを要求する権利があるわけではないのです。
もちろん、借家の場合でも新しい借家を探す間は元の家に住まわせろとか、その間の家賃は免除しろとか、いろいろと配慮は必要です。しかし、原理原則からすればそういうことです。
これが、言葉の正確な意味でのリストラクチャリング(リストラ)です。従って、アメリカ以外のすべてのジョブ型社会、解雇を規制している圧倒的大部分のジョブ型社会において、最も正当な理由のある解雇とみなされるのが、この種の整理解雇です。
日本人にとって最も理解しがたいのは、日本では最も許しがたい解雇であり、極悪非道の極致とさえ思われているリストラが、最も正当な理由のある解雇であるという点でしょう。ここがわかるかわからないかが、ジョブ型というものの本質がわかるかわからないかの別れ目です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら