「肩に力が入る」生活こそ不調をもたらす根本原因 症状や違和感が2週間続いたらまずは受診を

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しかし、ストレスによって「眠れない」「イライラする」「胃が痛む」「下痢を繰り返す」といった症状が引き起こされるように、積み重なる不安はあなたの健康状態を悪化させます。

しかも、脳科学や分子生理学の研究が進むに連れて、不安の蓄積はそれ以上に心身へ悪影響を与えていることがわかってきました。

最新の研究でわかった心身への悪影響

私たちの体内では、不安を感じるとコルチゾールというホルモンが分泌されます。ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールが過剰になると、脳細胞が破壊され、認知症やうつ病にかかりやすくなってしまうのです。

また、ストレスが自律神経を乱すと、心拍数や血圧、血糖値などが上昇。血液の通り道である血管を傷め、心疾患や脳疾患を誘発することもわかってきました。つまり、不安を軽視し、放置することは重篤な病を引き起こす可能性があるのです。

不安対策として、「肩の力を抜く方法」を学んでいきましょう。健康という面からいうと、力んでがんばることが美徳とはいえません。

今はそう考えるようになった私自身もまた、医者になったばかりの頃は、まだ若かったこともあり、がむしゃらに働いていました。とにかく仕事自体は大好きで、徹夜や当直も頼まれるまま引き受け、寝る間を惜しんで現場に立っていたのです。

しばらくすると、学生時代にラグビーで鍛えていたはずの体に変化が出始めました。風邪を引きやすくなり、頻繁に頭痛に悩まされるようになったのです。それでも「何かおかしいな?」と不安に思いつつ、「若い頃は激務に耐えるのが当たり前」という価値観のなかで、フル稼働を続けていきました。

そんなある日の夕方、たまたま勤務が休みの日曜日のことでした。テレビから流れる「サザエさん」のテーマソングを聞いているうち、とてつもなく暗く不安な気分に襲われたのです。人生で味わったことのない重苦しさです。

私はすぐに、自律神経とメンタルに変調をきたしていることに気づきました。「これは『サザエさん症候群』というヤツか? まさか自分が?」と。

学生時代、私は体育会のラグビー部で、いわゆるシゴキに耐えてきました。厳しい環境を経験していたからこそ、自分はストレス耐性が人よりも強いと思っていました。しかし、不安を隠しつつ、フル稼働を続けるしんどさに疲弊した心身は、危険信号を出していたわけです。

振り返ると、このとき心身の不調を伝えるシグナルに気づけたから、今があるといえます。

当時から私は自律神経の研究に取り組んでいたので、「長くいい仕事をするためには、本質的な健康を手に入れなければならない」と心を入れ替え、それまでのしんどくてもがむしゃらに耐えて進むスタイルを手放すことにしたのです。

私の場合は「サザエさん症候群」がきっかけとなりましたが、一般的には「疲れているのに眠れない状態」が心身からの危険信号だと考えてください。

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