では、オミクロン株に追加接種は有効なのか。オミクロン株は、コロナワクチンが標的とするスパイク(S)蛋白質に30カ所以上の変異があるため、ワクチンが効きにくい。追加接種しても駄目だろうとお考えの読者も多いだろう。確かに、12月10日にアメリカ疾病管理センターは、オミクロン株感染者43人中、14人は追加接種を終えていたと報告している。
ただ、その後に発表された研究によれば、悲観する必要はなさそうだ。12月9日、アメリカ・ファイザー社は、同社製のワクチンを追加接種することで、オミクロン株の阻止効果は25倍増強されると報告している。さらに、12月13日、イスラエルのシェバ・メディカルセンターの研究チーム、12月20日にはアメリカ・モデルナ社からも同様の報告がなされている。
12月15日にはアメリカ・バイデン政権の首席医療顧問であるアンソニー・ファウチ医師が、オミクロン株に特化したワクチンの追加接種は不要という見解を表明している。つまり、追加接種は完全ではないが、オミクロン株の感染リスクを相当レベル低下させるというのが、現時点での世界のコンセンサスだ。このような状況を知れば、日本は一刻も早く追加接種を進めなければならないことがわかる。2回目接種から6カ月とか8カ月とかの議論をしている場合ではない。
エビデンスに基づいた議論を
以上が、私が考えているオミクロン株の論点だ。アメリカ国立医学図書館データベース(PubMed)によると、「オミクロン」という単語をタイトルに含むコロナ関係の論文は、すでに63報が発表されているが、日本からは金沢大学呼吸器内科の研究チームが『呼吸器医学』誌に発表した一報だけだ。
ワクチン、治療薬については、「国産」の重要性を声高に主張する政府や有識者たちも、臨床研究による現状把握を求める人は少ない。これが、わが国のコロナ対策が迷走する理由だ。データに基づいた合理的な議論が必要である。
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