この状況について、岸田首相には既視感があるはずだ。今年1月、岸田首相のおひざ元である広島県が、広島市の中心に位置する4区の住民約80万人を対象とした無料PCR検査の実施を計画し、県議会は10億3800万円の予算を可決したが、最終的に8000人規模に縮小された。
これは、「医系技官の意向を反映したもの(厚労省関係者)」だ。広島県が計画を発表後、政府は広島市を「緊急事態宣言に準じた措置」の対象地域に該当しないという見解を示し、休業補償などで広島県を冷遇したからだ。広島県は厚労省の意向に従わざるをえなかった。岸田首相はこのあたりの状況について、地元の支援者から聞いているはずだ。
現在、内閣官房で、コロナ感染症対策推進室長を務める迫井正深氏は、広島大学附属高校から東京大学医学部に進んだ医系技官だ。このまま医系技官たちの抵抗を許すのか、あるいは、彼らを方向転換させるのか、岸田首相の手腕が問われている。
ワクチン追加接種の必要性は?
検査体制の強化と並ぶ、もう1つのオミクロン株対策の肝は、ワクチン追加接種の促進だ。オミクロン株に限らず、コロナ対策での追加接種の重要性については、「善戦で始まった岸田政権のコロナ対策に映る不安」(12月1配信)でも述べた。
日本が迷走する中、世界は追加接種を進めた。12月18日現在の主要先進国の追加接種完了率はイギリス40%、ドイツ30%、フランス24%、イタリア24%、アメリカ18%、カナダ11%だ。冬場の本格的流行が始まる前に、高齢者や医療従事者の接種を終えていることになる。12月1日から、医療従事者向けに追加接種を開始した日本は、先進国では異例の存在だ。
南アフリカの研究者たちは、デルタ株と比べて、オミクロン株の毒性は低いと報告しているが、感染者の多くが若年者である南アフリカの経験を、そのまま日本にあてはめることはできない。12月16日にインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが発表した報告によると、イギリスではオミクロン株の重症度はデルタ株と変わらない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら