日本企業の行動原理は市場シェアの拡大を目指すことだという点が指摘されてきた。急速に市場が拡大するという状況下では、現在の利益を犠牲にしても、将来により大きな利益を得られるようにシェアを拡大しておくことが、長期的に見れば有利だった。
シェア拡大のためには薄利多売が戦略に
ライバル会社との競争に打ち勝って市場でのシェアを拡大する手法として使われてきたのが、競争相手よりも安く売るという方法だ。ライバル会社が製造原価90円の製品を100円で売っているなら、こちらは同じ製品を95円で売る。販売数量が同じでは利益幅が小さくなって販売費用を賄えなくなってしまうので、利幅の縮小分は販売数量を大幅に伸ばしてカバーする。つまり薄利多売という経営戦略である。
企業の財務分析の本に書いてあるように、
であり、さらに、以下のように分解できる。
したがって、ROAは、売上高利益率(=利益÷売上高、つまり利幅)と総資産の回転率(=売上高÷総資産)の二つの要素に分けて考えられる。日本企業のROAが低いのは、売上高利益率の低さに大きな原因がある。米国企業が100円の売り上げで10円の利益が出るのに対して、日本企業は同じ100円売り上げても利益が2~3円しか出ないのだが、それは日本企業が薄利多売という戦略で発展してきたからだ。
国内市場が成熟した今日では、将来の利益を求めて現在の利益を犠牲にするような経営をしても、将来その投資を回収できるとは限らない。日本企業が得意としてきた「薄利多売」という経営戦略が低収益性という問題につながっているのであり、これまでの量の拡大とは違う質の改善への方向転換が求められている。
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