そして、予期せぬ結婚と子宝は、両親との関係性も急激に変えることになる。
「孫に会いたい、と母に言われて会ううちに、自然に和解できたんです。父とも関係性が深まったように思います。自分自身が親になって、父のすごさを感じられるようになったのが大きかったですね。子育てしてて、1人でも『こんなにお金がかかるんだ』と驚くのに、父は僕らきょうだい全員を私立の中高一貫校に通わせていた。
自分が子どものときに見ていた父は、ワーカホリック気味で、何の仕事をしているかもわからなかった。だから冷めた気持ちを抱いた頃もあったけど、『どんだけすごいことをしてたんだ……』と今は本当に尊敬しています」
ちなみに、現在大学生の妹2人は、父の「大学からは自分で出してほしい」という方針を突っぱね、授業料を出してもらっているという。しかし、そのことに対して慶太さんは、恨みや不満は何もないようだ。
「さっきも言いましたけど、もともと『与えてもらえるものはありがたく受け取るけど、与えられないことが普通』って思う性格なんです。だから、与えてもらっている人がいたら、良かったねと思うし、自分が与えられなくても『そうだよね』と思うだけで。
……でも、父としては違う感覚だったのかもしれません。実は奨学金を借りたことで、父から『お前には感謝している』と言われたことがあったんです。本当は父も『払えるなら全員分、大学まで払ってやりたい』と思っていたのかもしれないですね」
自身も同じ父という立場になり、大人にもなった慶太さん。仕事に忙しく奔走する父としては、仲間ができたような気持ちだったのかもしれない。
結果論としつつも「学歴は必要」と思うワケ
そんなふうにして現在、総額400万の借金を毎月1万7830円ずつ返している慶太さん。毎月の返済に関しては「なんとも思わない」そうだが、その背景にあるのは、収入の多さだ。
「貧乏な学生時代を過ごしたことで、『好きに使っても、お金が余る会社で働きたい』という軸で就活してたんです。結果、社会人1年目から手取りが30万円ほどあったので、返済もとくに苦ではありませんでした。
ただ、奨学金を引き落としにする手続きを行っていなかったせいで、毎月振り込み用紙が届いているのに面倒臭がって放置していたら、督促状が実家に送られてしまい、母親から怒られたことはありましたけど(笑)」
大人になる前の、父になる前の出来事とはいえ、慶太さんらしいエピソードである。
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