家飲みの質格段に上がる缶ビール「正しい注ぎ方」 いつもの家飲みがマンネリ化しない意外なワザ

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かつて居酒屋で酒といえばお燗のこと。「酒1本、いや2本もらっとこう」は温めた酒の入ったお銚子=徳利の本数だ。これを酌して盃で飲む。

冷たい汁より温かい汁、冷や飯よりも温かい飯。なんでも温かいほうが味が隅々まで発揮される。酒もまた同じ。適度に温めた酒は、香り、味、コクが全開して口内を、鼻腔を満たし、いつまでも口にとどめておきたくなる。比べると冷酒、常温はいかに無口だったことか。論より証拠、ぜひお試しを。

およそ30年前か。いわゆる地酒ブームを契機に、高級な大吟醸などが出回り始めると、いい酒は燗せず冷やで飲む風潮がおき、「この酒はお燗できません」と言い始める店も現れた。

生酒を燗してくれと言うと、びっくりした顔をする。それはここまで神経を使って冷蔵搬送、保存したのを温めるなんて、それまでの苦労が水の泡じゃないか、という気持ちだろう。そのとおり、その苦労に報いてまずは一杯、冷酒でいこう。そしてお燗も飲もう。

生酒を燗すると、醗酵中の炭酸ガスが刺激されて泡を吹き始める。中の酒はきっとびっくりしているのだろう。温度45度くらいで取り出し、ややあって盃から含むと、冷酒のキレのよいフレッシュさから、一斉に芳香が立ち、口当たりは柔らかく、味はふくらんでほんわかと、あたかも寒い冬を耐えてきた蕾が一気に花開いたか、これこそが生酒燗の快感……(表現自粛)。

火を使わない「さかな」がちょうどいい

家飲みのさかなは火を使わないものがちょうどいい。書き出せばキリがないが、私の常備3種は皿に盛るだけの<しらす・海苔・かまぼこ>だ。

『家飲み大全』(だいわ文庫)。書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします

まず<しらす>。生のしらすを軽く干したいわゆる「しらす干し」はまだやや残る湿り気がよく、刻み浅葱や刻み海苔と和えると風味がよい。しらす干しは生野菜サラダに加えるとか、混ぜて卵焼きとか、もちろん大根おろしもよく、もはや調味料としても必需品だ。

そして<海苔>。私は有明海産「藝州三國屋」の「焼寿司海苔」が近所で手に入り、これをそのままちょっと醤油でさかなにする。べたりでなく「海苔の醤油は縦につける」は山本益博氏の名言。何もないときに高級海苔は便利で、つねにこれがある安心感は大きい。

さらに<かまぼこ>。高級品でなくてもしっとりした歯ごたえは燗酒にはぴったり。板付きのまま盆に置き、15ミリに切りながら食べる。板一枚買えば三晩くらい飲める。上等なわさび漬けがあれば言うことなし。

太田 和彦 グラフィックデザイナー、居酒屋探訪家

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おおた かずひこ / Kazuhiko Oota

1946年中国北京生まれ、長野県出身。東京教育大学(現・筑波大学)教育学部芸術学科卒業。資生堂宣伝制作室アートディレクターを経て独立。2001〜2008年、東北芸術工科大学教授。本業のかたわら日本各地の居酒屋を訪ね、数々の著作を発表。著書に『居酒屋百名山』『ニッポン居酒屋放浪記』『ひとり飲む、京都』『超・居酒屋入門』『居酒屋を極める』『太田和彦の東京散歩、そして居酒屋』(河出書房新社)、『東海道居酒屋五十三次』『居酒屋かもめ唄』『ひとり旅 ひとり酒』老舗になる居酒屋』(光文社新書)など多数。BSイレブン『太田和彦のふらり旅新・居酒屋百選』出演中。

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