日本人の考えがコロナで180度変わった根本理由 今こそ「自分の感情」と向き合いライフシフトを

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平野:私がお二人にお伺いしたかったのは、ライフシフトの定義です。なぜなら、そのコンセプトにはいくつかの捉え方があると思うからです。教育機関について書かれている第7章に、こう書かれています。

「マルチステージの人生を生きるうえで核を成すのは、しっかりした自己認識をもち、みずからの価値観と目的と意欲の源を折に触れて再確認することだ」

これは、私が心がけている「アップデート&トレイン(訓練)」に非常に近いものがあります。多くの人は、50歳や60歳になったときの人生がどうであるべきかを考え、そのために20代、30代で何をやるべきかと逆算して考えがちですが、私はそのような考え方には納得できません。

なぜなら、1年前よりも、今できることのほうがはるかに大きいかもしれないからです。私は、毎年夢をアップデートしていくほうがいい。自分の夢だけでなく、周囲の方やクライアントの方々の夢もアップデートしたい。そうしてくださいと言われなくても、仕事としてお金をもらっていないとしてもです。

私のモットーは「アップデート・ユア・ドリーム」です。だからこそ、この一文に最も納得し、これがライフシフトの定義だと感じたのですが、お二人のご意見もぜひお聞きしたいと思います。

未来を予測することは不可能

アンドリュー:そのとおりだと思います。人生が長くなることの醍醐味は、大人になってからの成長に時間をかけられることです。年齢を重ねても、さまざまなことにチャレンジしたり、変化したりするための時間が残されているのです。平野さんの「アップデートし続ける」という考えは素晴らしいと思います。

リンダ: 20代で40歳や50歳になったときの人生なんて予測できませんよね。技術的な動向や社会的な動向も念頭に入れる必要があります。私たちは今、驚異的な変革と変化の時代にいます。だから、未来を予測することは不可能なのです。

平野さんにはベトナムでの体験を語っていただきましたが、考えを実行に移す、というのも非常に大切だと思います。私は心理学者なので、人間の考える習性が大好きです。

でも実際には、考えるだけではなく、やってみて、感じてみて、学ぶものです。アンドリューが言ったように、長生きの醍醐味は何かをする機会が増えることです。私たちは、「まずは飛び込んでやってみよう」と言いたいのです。

アンドリューにはまだ話していないのですが、私はキックボクシングを始めました。とても面白いし、新鮮な体験です。おかげで体のバランスがよくなりました。何歳になっても、ベトナムに行ったり、キックボクシングを習ったり、この素晴らしい人生を楽しむことはできるのです(鼎談2回目につづく)。

(構成 笹幸恵)

アンドリュー・スコット ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授

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Andrew Scott

ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授、スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センター・コンサルティング・スカラー。ロンジェビティ・フォーラム共同設立者であり、英国予算責任局のアドバイザリーボードと英国内閣府の栄誉委員会メンバーも務める。邦訳された著書に『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』がある。

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リンダ・グラットン ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授

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Lynda Gratton

ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授。世界をリードする「働き方の未来」の専門家。全世界で最も権威ある経営思想家ランキングである「Thinkers50」では、トップ15にランクインしており、2018年には安倍晋三元首相から「人生100年時代構想会議」のメンバーに任命された。著作である『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』シリーズ(アンドリュー・スコットとの共著)は日本で大ベストセラーに。長寿社会におけるキャリア構築の考え方――「人生100年時代」というキーワードをつくり出した中心人物である。

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平野 未来 株式会社シナモン代表取締役社長CEO、シリアル・アントレプレナー

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ひらの みく / Miku Hirano

東京大学大学院修了。レコメンデーションエンジン、複雑ネットワーク、クラスタリングなどの研究に従事。2005、06年にはIPA「未踏ソフトウェア創造事業」に2度採択。2016年にAIエンジン開発を手がけるシナモンを設立。2021年より内閣官房新しい資本主義実現会議有識者構成員に就任。また、世界経済フォーラムが選出する世界に変化をもたらす40歳以下のヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)の2022年度クラスに選出。三児の母。

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