日本人の考えがコロナで180度変わった根本理由 今こそ「自分の感情」と向き合いライフシフトを

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リンダ:今おっしゃったことは、非常に重要な指摘だと思います。

私たちが本を書いたとき、まさに「物語(生きがい)」を探求しようとしたのです。教育・仕事・引退という従来型の3ステージが機能しないことを発想の出発点にしました。

そして、それが1人ひとりにとってどんな意味を持つのか。『ライフ・シフト2』ではさまざまなペルソナが登場し、彼らの物語を紹介しています。これは個々人が可能性を探る手助けをするためです。

私たちには無限の可能性があり、人生でたくさんの「ありうる自己像」が存在します。その可能性を探ることが、本当に重要になってきます。

そのために本書が指摘していることの1つは、できるだけいろいろなことをやってみるということ。それによって自分をもっと理解できるようになります。2つめは人の輪を広げること。自分とは違う人たちと出会い、一緒に過ごすことで、今の自分を超えた可能性が見えてくるのです。

今は極端な「実験」の時代

アンドリュー:長生きすることでまず考えるべきは、「時間」の概念です。

長生きするとは、たくさん時間を持つということ。何歳になっても、これから先もまだ時間がある。だからこそ「ありうる自己像」を探ることができます。そして、より多くの変化を目にして、意義のある長い人生を送り、物事にうまく対処できるようになるでしょう。

それが私にとっての「変化(シフト)」です。

アンドリュー・スコット/英ロンドン・ビジネススクール経済学教授、米スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センター・コンサルティング・スカラー。ロンジェビティ・フォーラム共同設立者。英国予算責任局アドバイザリーボードと英内閣府栄誉委員会のメンバー。邦訳著書に『LIFE SHIFT』『LIFE SHIFT2』(リンダ・グラットンとの共著)(撮影:今井康一)

『ライフ・シフト2』でも、今起こりつつある大きな技術的変化について触れています。それは変化のプロセスをもたらします。もちろん時間の使い方には、物語やアイデンティティーを求める人間の基本的な心理が関係しています。

教育・仕事・引退という3ステージの生き方から離れることは、時期や働き方の再編成にもつながります。そうなると、自分をどう認識するかが変わってきます。なぜなら、たとえば「これが私の仕事だ」といった具合に、これまでと同じように自分自身を認識することはできなくなるからです。これは本当に重要なことだと思います。

私は経済学者として、産業革命や今日起きていることなど、世界の大きな変化に注目してきました。それらの変化がもたらした経済的なメリットも重要ですが、社会にもたらすメリットについても考えるべきだと思います。変化は、社会にとって、また個人にとって、役立つものでなければなりません。

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