日本人の考えがコロナで180度変わった根本理由 今こそ「自分の感情」と向き合いライフシフトを
平野: 3ステージの時代には序列が重要視されていたように思います。どれだけいい大学に行っているか、どれだけいい会社に勤めているか、といったことです。
しかし今はマルチステージの人生ですから、リンダさんが言ったように幅広い可能性を持つことがとても重要です。
私の場合、たとえば10年ほど前にベトナムに移りましたが、それは運命のようなものだと感じています。行ってみたらそこの生活に憧れ、移住し、そこで会社を立ち上げました。
さまざまな国を訪ね、自分の感情と向き合いながらベトナムに行ったとき、最大の感動と興奮を覚えたのです。新しい場所に行き、多くの人と出会うことはとても大切だと思います。
リンダ:平野さんは、本書でいう「社会的開拓者」ですね。社会の常識とは違うことを成し遂げ、その物語を皆に語る人です。私たちが『ライフ・シフト2』で期待したことの1つは、平野さんのような社会的開拓者が、自分のやったことや感じたことを語るためのプラットフォームを提供することでした。
もしこの本をきっかけとして、平野さんのような人が「私は違う道を歩み始めました。これが私の学んだことです」と語ってくださるようになったなら、私たちはとてもうれしく思います。
社会的開拓者が果たす役割
アンドリュー:本書では、長寿化とテクノロジーによって、私たちの生活や経済活動のあり方が、工業化や産業革命期に見られたような根本的な変化を遂げているということを書いています。
私たちは皆、変化が訪れようとしていることはわかっています。問題は、どのような変化を期待しているか。個々人がそれを真剣に考え、貢献するべきだと思います。
一方で、企業や政府に対して要求すべきこともあります。そして、もたらされる変化が私たちのためになることを確認する必要があります。
そこに「社会的開拓者」が果たすべき重要な役割があると思います。実験を経て何が役に立つかを見つける必要があるからです。
新しいテクノロジーへの適応が、政府や企業の利益のためだけではなく、私たちにとってためになるのだと確信することが大事なのです。
リンダ:アンドリューが指摘した「実験」が非常に大事です。『ライフ・シフト2』を書いていたときには、パンデミックを想定していませんでした。実際に出版されたのはパンデミックの最中です。あちこちで実験が行われています。
今こそ本書を読んでほしいですし、本書で書かれたような行動を起こす理由があるのです。
MITスローン経営大学院のコラムでも書きましたが、今はさまざまな勤務形態を試す企業が出てきています。平野さんのような社会的開拓者が、自分にとって何が重要かを言えるようになればなるほど、企業や政府が耳を傾けてくれると思います。今は極端な実験の時代なのです。