回復道半ば「映画興行」21年の結果と22年の期待作 ハリウッド大作とディズニーが浮上のカギ

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ただし、ヒット作のなかでも、本来であればもっと興収が伸びていてもおかしくない作品も目立った。『名探偵コナン』や『るろうに剣心』2部作は100億円も視野に入っていた作品といえる。しかし、どちらも公開が緊急事態宣言と重なってしまった。公開のタイミングが違っていれば、さらに興収が上がっていたことも十分考えられる。

一方、伸び悩んでいるのが洋画。2020年はハリウッド大作の公開がほぼゼロとなったが、2021年の夏以降は戻りはじめていた。しかし、映画館への客足は思うように回復していない。

作品ごとに見ると、『ワイルド・スピード ジェットブレイク』(8月6日公開)が洋画ではトップだったが興収は36億円にとどまった。期待されたダニエル・クレイグのラスト作品『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』は28億円、小栗旬が出演したモンスターバース4作目『ゴジラvsコング』は19億円ほど。作品規模や映画界の期待の大きさに対して興収が追いつかない作品がほとんどで、10億円に届かない大作も続出した。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は興行的には、コロナ禍の影響を受けた作品のひとつ © 2021 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

こうした洋画不振には、コロナ以外にも要因がある。そのひとつがディズニー作品に代表された「配信シフト」の姿勢だ。

ディズニーは今年だけでも『ラーヤと龍の王国』『あの夏のルカ』『ブラック・ウィドウ』『ジャングル・クルーズ』『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『エターナルズ』『ミラベルと魔法だらけの家』など作品数は多いが、興収はいずれも10億円前後とかつてのような本来の作品力に見合った数字をあげられていない。

それは、コロナ禍において自社配信サービス・ディズニープラスでの配信開始日を劇場公開日とほぼ同時(1日違い)にしているため、都心部のシネコンなどで配給されないケースが相次いだ。

同日配信で映画館への客足に影響

米ディズニーは『シャン・チー』以降、「配信は劇場公開の45日後」とし、日本もそれにならったことで、秋以降は大規模公開の上映館数に戻っている。だが、11月5日公開の『エターナルズ』の興収見通しは11〜12億円と思わしくない。

ここからわかるのは、劇場と配信の観客の分断が進んでいること。映画館の大スクリーンで観たい映画ファンやレジャーのようなイベントとして楽しむ若年層と、家のテレビやスマホで気楽に観ることを優先するライト層で、映画というコンテンツを楽しむメディアがはっきりと分かれてきていることがうかがえる。

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