演じた当人の柳楽は「ツービートの漫才はテンポが速く、ライブ感を出すことが何より難しかった」と明かし、自身にとって初の漫才シーンの練習を何度も重ねたそうです。その練習に付き合ったのは、キヨシ役を演じた実際のお笑い芸人であるナイツ土屋伸之です。この土屋の起用について劇団ひとりが説明しています。「漫才のシーンはちゃんとやりたいと思って。漫才の名人であり、浅草の匂いも知っているからこそお願いした」と。だからクオリティーが高いのです。
タップダンスシーンは海外から高評価
約2時間尺の本編の中で、主演の2人だけに焦点を当てすぎないバランスのよさにも心地よさを感じます。深見を支える妻役を演じた鈴木保奈美と踊り子役の門脇麦はある意味Wヒロインの役割をまっとうしています。この女性2人からも浅草で生きる人生観が垣間見えてきます。日本のエンターテインメント界のトップに上り詰め、今もなお活躍する実在するビートたけしの原点は浅草フランス座にあり、深見をはじめとする浅草フランス座で生きた人々によってスタイルが作られたことを容易に解釈できる作品です。
ただし、日本と海外とでは反響に落差があるのも事実です。多くのNetflix作品にプロの批評家から一般のコメントまで評価が集まるアメリカの批評サイトRotten Tomatoesでも今のところ反応が薄いです。手厳しく評価したレビュー記事も上がっています。そんななか、アメリカの最大手エンターテインメント業界誌『Variety』(2021年12月10日掲載)で取り上げられた内容は演出の一部を高く評価しています。ステージに上がってタップダンスを披露するシーンやラストの空想のファンタジー感が「新鮮に見せている」と注目していました。海外では驚きを与えるフレッシュ感を何より重要視するからです。
日本国内で楽しめる作品であれば十分という見方もあるでしょう。でもやっぱり、せっかく全世界同時配信されるのだから、グローバルランキング入り常連の韓国作品の勢いを見習いたい。せめて非英語作品の中でグローバル集計のNetflix人気映画TOP10にはランクインしたいところ。『浅草キッド』が配信された週の集計ではアジアからタイやインドの映画が非英語作品ランキングに食い込んでいました。日本の独特な文化や事情をたとえ100%理解できなくても、タケシのような独特の発想と勢いで日本発作品が浮上することに期待は持ち続けたいです。
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