劇場公開ではなく、なぜ配信なのか
2021年11月末からディズニープラスで公開された『ザ・ビートルズ:Get Back』はファンにとって必見の作品でしょう。ただし、これを楽しむのにファンであることが必須条件ではありません。今見るべき理由は、ドキュメンタリー作品としての新しい価値を見出していることも大きいです。3部構成の計約8時間にわたる映像体験の中で巨匠ピーター・ジャクソン監督の執念すら感じます。
『ザ・ビートルズ:Get Back』では、ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4人が、1969年1月に曲作りを行うセッションの様子が映し出されています。名曲「レット・イット・ビー」や「ゲット・バック」を含む、新曲14曲をゼロから創作する過程から、彼らにとって最後のライブとなったロンドン・アップルスタジオ屋上での42分間の“ルーフトップ・コンサート”まで、その映像はどこを切り取ってもファンにとって歴史的瞬間。これを見届けることができるのは、ディズニープラスでのみ。加入のハードルを乗り越える必要があります。
当初は劇場で公開される約2時間半の長編映画として計画されていたそうです。それが何故延長し、配信されることになったのか。その理由をアメリカ最大手のエンターテインメント誌Varietyの独占インタビューでピーター・ジャクソン監督自ら語っています。
これによると、コロナ・パンデミックが起こった2020年3月に、ディズニーが当初計画していた2020年秋の劇場公開時期を1年延期することを決めたことが大きなきっかけとなっています。編集期間が1年延びたことで、57時間以上の映像と150時間以上の音源の中から使える素材を改めて見直し、見落としていた価値ある映像に気づくことができたというのです。そのため、2時間半の映画からまずは6時間の超長編映画へと計画が変更されていったというわけです。実際に完成した作品はさらに2時間増加した約8時間の超大作となっています。
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