高齢になると「もりもり食べる」が実は正解の理由 やせていると「肺炎」や「骨折」のリスクが急上昇

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さらに、全国の訪問看護を利用している高齢者のBMIを調査したところ、BMIが18.5にも満たない低体重の人が60%にも上ることがわかりました。しかも、BMI16未満の「重度のやせ」の人が28%もいたのです。

これは、ガリガリにやせてしまった危険なレベルで、女性の場合、BMIが16未満だと、BMI22の人に比べて死亡リスクが2.6倍にアップすることもわかっています。このように、日本には、やせすぎによって健康を危険にさらしている高齢者がたくさんいるのです。

やせていると「肺炎」や「骨折」のリスクが急上昇

高齢になってやせてしまうことが、なぜ危険なのか。それは、筋肉量が減少して「サルコペニア」や「フレイル」につながりやすくなるからです。サルコペニアは「筋肉減少症」とも呼ばれ、運動機能に支障をきたすほどに筋肉が落ちてしまう現象。

フレイルは、「虚弱」と呼ばれ、運動機能だけでなく認知機能も衰えて、要介護や寝たきりの一歩手前のような状態になることを指します。やせて体重が落ちると、こうした衰えが進みやすくなるうえ、転倒して骨折をしたり肺炎になったりするリスクがたいへん高まります。

低栄養でやせた高齢者はたいへん骨折や肺炎に陥りやすく、骨折と肺炎は、在宅高齢者が救急車で緊急入院する理由のじつに45%を占めています。しかも、やせていると、「入院する」ということ自体が大きなリスクになります。やせた高齢者が衰えが進み始めた状態で入院してしまうと、とても高い確率で身体機能や嚥下機能、認知機能が低下してしまうことになるのです。

高齢者が入院すると、基本的にベッドの上で安静にしつつ、検査や治療のために食事制限をされることになります。とくに、誤嚥性肺炎を起こした患者は、口からの食事を止められるのが一般的です。すなわち、ろくに動かず、食事も満足に食べられない状況が続くうち、筋肉や体重が落ち、てきめんにサルコペニアやフレイルが進んで衰弱していってしまうのです。

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