「仕事パツパツです」SOS出せない組織の根深い病 リモート出遅れ企業が信頼関係を築けない理由

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私自身がパンクして、いろんな人に迷惑をかけてきましたし、プライベートの時間を充実させたくて起業したのですから、みんなにもそうできるようにしたいと思っています。

リモートワークは、リアルな信頼関係が基本

会社全体を眺めて、従業員の様子に気がつけるようにするためにも、私は、経営者が、ある程度、自分の時間をとる必要があるとも思っています。

組織をボーッと眺めて考えるということは、スケジュールがきつきつの状態ではできません。それに、管理職こそ余裕を持って、時間を浮かせ、自分の時間や考える時間を確保していなければ、会計士時代に私が上司の女性の働き方を見て感じたように、部下たちは、どうしても「自分もこうなりたい」とは思えなくなるでしょう。

日本人は働きすぎだと言われますから、特に時間の確保は重要です。そこにお金をかけてでも、自由な時間や余暇を確保できる文化ができるといいなと思いますね。

コロナでリモートワークになって、ある程度、時間が自由になった面はあります。ただ、最近、リモートになって生産性が落ちたと言われるようになりました。日本人は、タイムマネジメントが下手なのかもしれません。

弊社は、2016年の創業当初からリモートワークだったこともあって、従業員に対しては、見えないところがあるということを意識して、できるだけ明確に指示するようにしています。

そして、コミュニケーションは、実はほかの会社よりもかなり綿密にとるようにしています。当初から、対面で会うことを意識して、たびたびランチに行ったり、一緒に仕事をしたりしてきました。

そうしてお互いの関係性を作っておかないと、メールやスラック、ズームなどでしか会話したことがない人に対して、「いま仕事がパツパツなんです」とは言い出せません。

いまリモートをやれている会社は、そのような環境が整っているか、もしくは、これまでオフラインで培った信頼関係を使って、リモートに移行した会社かのどちらかです。

しかし、後者のパターンでは、その信頼関係は、いずれなくなってしまいます。ある程度の期間は貯金が持ちますが、やがて新入社員が入るなど、人が入れ替わることで失われてしまいますから。ですから、リモートであっても、やっぱり会うことが大事です。

弊社では、従業員側から、「オフラインで集まりたい」「そろそろ会ったほうがいい」という意見が出るような文化ができています。

タイムリッチに働くためには、リモートであっても、自分の仕事の状況を言える関係性を作ることが大事です。そういった意味で、『タイム・スマート』は、管理職や経営者にとって必読の書ですね。

(構成:泉美木蘭)

井口 恵 Kanatta代表取締役社長

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いぐち めぐみ / Megumi Iguchi

2010年横浜国立大学経営学部卒。監査法人やファッション業界での経験を経て、2016年に株式会社Kanattaを創業し、COOに就任。19年より現職。「ジェンダー平等の実現に貢献する」ことをミッションに、ドローンジョプラス、コスモ女子、エシカルガールの3つの女性コミュニティを運営し、さらに多くの女性の夢の実現をサポートするためにクラウドファンディング事業を展開している。

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