2004年から「東京水」の販売を始めた東京都では、1992年からオゾンや生物活性炭を使用し、カビ臭やアンモニア臭などを除去する特別な浄水法「高度浄水処理」を導入。しかし、水質は向上したことが十分に浸透せず、「水道水はまずい」と言われ続けた。そのため水道水をボトルに詰めて売ることに。すると都民からは「おいしい」「ミネラルウォーターと遜色ない」と評判は高かった。
その後、2011年、大阪市が高度浄水処理したペットボトル水道水「ほんまや」を、国際的な品質コンクール「モンドセレクション」に出品(本部・ベルギー)し、「ビール、飲料水並びにソフトドリンク部門」で金賞を受賞した。翌2012年からは富山市「とやまの水」などが続いた。
ペットボトル水道水が製造された背景には、前述の通り料金値上げがある。水道の質に不満をもたれたままでは、値上げなど到底できないという懸念が、「安全でおいしい身近な水」の存在を知ってもらおうというPR作戦につながったのだ。
各自治体が次々と販売終了している
しかし、潮目は変わった。2019年、小樽市は採算が取れないことからペットボトル水道水の製造を終了。各自治体の平均的な製造単価は1本約130~140円程度だが、販売価格は100円前後、自治体の魅力の発信を目的としてなどを理由に無償配布するケースもある。事業としては採算が取れない。
2020年には、熊本市もゴミ減量のためにペットボトル水道水の製造終了を決めた。このほか、2021年には帯広市や松本市、仙台市もプラスチックゴミによる海洋汚染、石油由来の製品の削減など、環境への負荷に配慮するため販売を終了している。東京都の「東京水」も今年10月で、製造、販売をすべて終了し、「マイ水筒」に無料で水道水を入れられる「給水スポット」に力を入れている。
本稿では、今年水道料金の値上げを行った主な自治体を紹介したが、値上げはこれで終了したわけでははない。このくらいの値上げが、今後も3〜5年ごとに続くと考えられる。
実際、今年水道料金を値上げした宮城県気仙沼市は、広報誌において、すでに次回の値上げを告知している。
これはすべての自治体で起きることだ。水道にかかるコストの増加と人口減少に伴い、段階的に水道料金は上がっていくだろう。来年は前橋市、佐倉市、黒部市、飯塚市などで料金値上げが予定されている。自分の住む自治体はどうか確認するとよいだろう。
水道施設の老朽化や人口減少などから、水道料金を値上げしなければならない実情を、自治体は市民にどう伝えていくのか。もはやペットボトル水道水の時代ではない。20年後、30年後の未来の自治体の姿、そのために必要なインフラについて広く共有し、市民に理解してもらう必要がある。
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